週末農業→地域農業の課題解決のために新規就農
サツマイモ栽培のこだわりや苦労
スーパーへの販売に加えて、加工業者への出荷にも力を入れる
大阪府八尾市の(株)オオサカポテト代表の渡邊博文(わたなべ ひろふみ)さんに、新規就農までの経緯やサツマイモの栽培や販路などを伺いました!
就農経緯:趣味で始めた農業の魅力にハマる
管理人渡邊さんはどのような子どもでしたか?



愛知県岡崎市で生まれ育って、学級委員長や生徒会もしていた明るい子どもでした。
全力で楽しんで仕事しているような上司に憧れて、大学卒業後は広告会社に就職、2019年に名古屋から大阪に転勤しました。
HPやCMの営業で結果も出していたので、非常にやりがいを感じていました。
私は非農家でしたから、農業が仕事になるなんて、正直想像もしていなかったです。



サラリーマンとして、バリバリ活躍されていたのですね。
渡邊さんが農業に興味を持ったきっかけはなんですか?



大阪での週末の趣味を作ろうと思った時に、「銀の匙」というマンガが頭に浮かびまして。
自分でも採れたて野菜の美味しさを、味わってみたくなったんです(笑)。
だから「大阪 農家」をSNSで検索して、自分で栽培や販売をさせてもらえそうな農家さんに片っ端からDMしましたね!
幸運にも、農業未経験の私に理解のある花卉農家の方が、返信をくれて。
2020年に花卉農家でバイトをしながら、空いていた40aの農地とビニールハウスで、野菜の栽培もさせてもらえることになったんです。



SNSから農家と直接連絡を取ったのですね。
当時は広告会社で働きながら、週末に農業をする感じだったのですか?



そうですね。週末にミニトマトやスナップエンドウなどを栽培しては、近所の八百屋さんに出品していました。
ただ週末農業だと栽培に手いっぱいで、往復30分の出品も大変で。
だったらお客様に直接畑に来てもらおうということで、収穫体験を企画して、InstagramでPRしました。



なるほど。
収穫体験の評判はどうでしたか?



1回3000円の収穫体験は、子どもたちもお母さん方にも大盛況でしたね!大阪府八尾市の都市近郊部は、農業体験の数も減っていたので、毎週末家族で来てくれる方もいるほどでした。
「もっと子どもたちに収穫体験をさせてあげたい!」
と、ボランティアとして手伝ってくれる方もいて、農業の可能性ややりがいをすごく感じましたね。



それはすごいですね。
収穫体験の成功を機に、新規就農を目指したのですか?



いや、当初は「週末農業で副業として成り立てばいいかな。」くらいに考えていたんですけど…、
農業をしていくうちに、八尾市の農業の課題にはっきりと見えるようになったんです。
・農家の高齢化による耕作放棄地の増加
・消費者は近くにいるのに、農業との接点がない
など、無関心ではいられなくなったんです。
だから2022年に会社を辞めて、2023年に認定新規就農者になりました。



八尾市でも、農業の課題は顕在化しているのですね。
渡邊さんが新規就農すると決めた時の、周囲の反応はどうでしたか?



家族には反対はされずとも、心配はされていたと思います。
ただ収穫体験や野菜の販売をしていたことで、私が農家になろうとしていたことは理解してくれていたと思います。
会社の上司からは、
「お前の若さと行動力が羨ましい!何かあったら手伝ってやるから。」
と、意外にも応援してくれましたね。


就農経緯:作物をサツマイモに絞り、新規就農



2023年に認定新規就農者になったということですが、
農業を始めた当初の、多品目での収穫体験から、サツマイモ栽培に絞った理由はなんですか?



・反当り約40時間の作業で栽培出来て、耕作放棄地を多く請け負っても作業が回せる
・収穫適期が長く、週末の収穫体験などにも合わせやすい
・収穫体験でサツマイモを掘り上げた時の、子どもたちの喜びよう
など、「八尾市の農業の課題は、サツマイモ栽培で解決できるのでは?」
というアイディアが頭にあったんです。



たしかにサツマイモ農家は、大面積をこなしているイメージですね。
ただ新規就農となると、資金面や設備投資というハードルがあると思います。
渡邊さんは、初期投資はどのくらい準備されたのですか?



正直に言うと就農初年度は、借入金は小さく始めようと考えていたんですよ。
しかしサツマイモは、定植から収穫まで、機械化と人手が必要不可欠です。
トラクターやポテカルゴなどの農機、そして私と一緒に働いてくれる従業員への投資のために、最大まで初期投資しようということで。
自己資金300万円と次世代農業人材投資資金の他に、青年等就農資金の融資をMAX3700万円借りました。



かなりの初期投資額ですね。
その機械設備投資が稼働できるほどの農地は、どうやって確保しましたか?



まずは、お世話になっている花卉農家の方に農地を紹介をしていただきました。
自分でもJAや市役所にも何度も足を運んで、ゼンリンの住所情報を基に、地主さんに手紙を投函したりもしましたね。
農地確保はなかなか大変でしたが、約1.5haからスタートできました。



自分の足で回って、農地を集めたのですね!
行動力がすごいなあと思いますが、就農に対しての不安はなかったのですか?



不安は当然ありましたよ。
月12万円で生きられる生活レベルまで下げていましたが、就農初年度は通帳残高が見る見るうちに減っていくので、気持ちの余裕はなかったです…。
だけどInstagramで私の想いに共感して、一緒に働いてくれる方のためにも、とにかく毎日必死に駆け抜けてきた感じですね。
栽培:急拡大したサツマイモ栽培のこだわりや苦労



では現在の栽培や労働力を教えてください。



2025年度は6haを栽培、2026年度は6.5haの作付けを予定しています。
大部分はサツマイモのシルクスイート「夢シルク」を栽培しています。
労働力は、フルタイム勤務が10名、パートさんが約13名、農福連携で約12名の方に働いてもらっています。



かなり順調、いや、急拡大されたのですね!
栽培の失敗や苦労とかはなかったのですか?



失敗はたくさんありますけど、一番苦労したことは、やはり排水対策ですかね。
オオサカポテトの借りている農地は田んぼがほとんどで、水はけのいい土目を好むサツマイモを栽培するためには、改良が必要なんです。
就農初年度は、畝間にオタマジャクシが泳いでいるほど、水はけが悪くて苦戦しました…。
反当たり1.5tは採れたのですが、全国平均は約反2.2tなので、改善の余地は多くありましたね。



田んぼでサツマイモ、なかなか大変でしょうね…。
水はけ対策として、どのような改善をされたのですか?



明渠を掘り、管理機で水の通り道を作り、サブソイラーで硬盤層を壊して。
畝間や株間、竹炭や牛糞堆肥など、肥料も試行錯誤をしました。
YouTubeの栽培動画は見尽くしましたし、色々なサツマイモ産地に視察に行っては、学んだことを取り入れましたね。
その成果で2025年度は、平均反収3tまで伸ばすことができました。



田んぼでの栽培で、反収を倍に!
すごい栽培ノウハウを作り上げたんですね…!
異常な夏の高温が続いた2025年でも、サツマイモは平気だったのですか?



いや、2024年度の高温干ばつで、12%ほど空洞症が出てしまいました。
その反省から、
・生育状況を見て灌水をする
・地温を下げる効果がある白黒マルチを使う
などの工夫をしたのも、2025年の反収3tに繋がったのだと思います。



年々環境に適応して、栽培も進化させてきたのですね。
あとは、今後の栽培の課題はありますか?



農地ごとに収量のばらつきがあるので、栽培技術をさらに上げて改善していきたいです。
味も見た目も棚保ちもいい夢シルクを栽培して、大阪のスーパー全店での販売を目指したいです!


販路:スーパーへの販売をメインに、加工品にも挑戦



現在の販路はどんな感じですか?



仲卸を通したスーパーへの納品が6割ほどですね。
あとは加工業者へも3割、直販や40軒ほどの飲食店にも卸しています。
夢シルクの美味しさは、食べてもらえば分かってもらえる自信はありましたが、
八尾のJAは営農部門がないので、販路も自分たちで一から開拓する必要があったんです。



一から販路開拓、大変な努力ですね!
年々増やす予定のサツマイモの販売先は、最初はどのように取引していったのですか?



恥ずかしながら就農当初は、夢シルクを栽培スタートしたはいいものの、肝心の販売先は決めていませんでした。
「このままでは、せっかく作ったサツマイモがロスになってしまう!」という恐怖がありましたよ(笑)。
だからまずは、八尾市で一番大きなスーパーに営業電話をしたんですが、
「生産者さんとの直接取引はしておりません、仲卸業者を通してください。」
と言われて初めて、仲卸の存在を初めて知ったくらいです(笑)。



栽培を始める前に、出口を決めておかなかったのですね…(笑)。



しかし仲卸業者に何度もお願いして、取引をしていただけることになって!
納品を日々こなしていく中で、
・3~5本、一袋550gがニーズがあること
・シールの貼り方で、売れ行きが変わること
など、スーパーで販売するノウハウを学ぶことができました。
取引実績や販売ノウハウを積み重ねて、徐々に他のスーパーでも販売が広がった感じですね。



仲卸の方やお客様は、渡辺さんの努力を見ていてくれたんですね。
懸命にコツコツ納品することが大事だと、改めて気づかされました。



本当に、素直さと情熱しかなかったですが、仲卸の方やお客様には感謝しかないです!
そして今後は、どうしても30%ほど出る規格外品を利用するために、夢シルクの加工にも力を入れていきます。
加工業者にサツマイモペースト加工を委託して、夢シルクを使った加工品を増産して展開していく予定です。


目標とアドバイス:サツマイモの産地化、その先の目標



2025年には㈱オオサカポテトに法人化されたそうですね。
法人化したのは理由があったのですか?



法人化に関しては、新たに熟成庫を新設するための資金調達や、組織体制作りのためですね。
初年度は、私が住んでいたアパートの一室の空調を管理して、サツマイモを寝かせていたんです(笑)。
さすがに熟成庫は必要不可欠ということで、クラウドファンディングや銀行系ファンドからの資金調達で、自社で熟成庫を構えました。



サツマイモと共に生活していたんですね(笑)!
とはいえ、渡邊さんの行動力は凄いです。
新規就農されてから数年で急拡大されましたが、渡邊さんを突き動かすモチベーションは何ですか?



まあたしかに現在は、毎日朝から晩まで仕事漬けですし、そこまでしても赤字を出した年もあります。
だけど農業を辞めたいと思ったことはなくて、広告会社に就職した時のように、
「やりたいと思ったことを、遊ぶように全力でやる!」
という感覚なんですよ。
そして私のやりたいことに共感して、一緒に成長を続けてくれる従業員の方のためにも、もっといい会社にしていきたいです!



もっといい会社とは、具体的にはどのような目標ですか?



熟成庫が満タンでフル稼働するほどサツマイモを作って、大阪全部で1000店舗あるスーパー全てに夢シルクを納品したいです。
そこまでいけば売上2億円、「大阪をサツマイモの産地に!」というミッションは達成できると考えています。



そして会社の存在意義は売上だけではなく、
・収穫体験ができる場所の提供
・週末農業として農業バイトができる環境
・新規就農を目指す方の受け入れ
など、多様な農業の関わり方を、受け入れられる会社でありたいと思っています。
「大阪で農業がしてみたい方それぞれを、受け入れられる箱」の役目を、オオサカポテトが担っていきたいです!



売上だけではなく、その先の地域貢献も目指すビジネスモデルなんですね。応援したくなります!
最後に、新規就農を考えている方にアドバイスがあればお願いします。



これからの農家は、ただ作物を作ればいいわけではなく、経営者として数字と向き合う勇気が大事だと思います。
経費も高騰して気候変動も激しい時代ですから、悩んで踏み出せない方も多いかと思いますが…、
まずは私のように、週末農業から始めたらいいと思いますよ。
大阪で農業がしたいという方は、オオサカポテトにまずは相談に来てください!


おまけ:SNSとYouTubeのPR戦略



オオサカポテトさんは、InstagramやYouTubeも積極的に活用されていますよね。
それぞれどのような意識で投稿されていますか?



Instagramは就農前から活用していて、収穫体験などのイベント告知や、栽培のこだわりなどを伝えています。
多くの若い方はInstagramを見ていますし、農業は画像で雰囲気が伝わりやすいメディアなので、PRするには活用しない手はないと思っています。



YouTubeでは資金面などの経営の裏側や栽培方法など、私が新規就農する時に知りたかった情報を、赤裸々に語っています。
理念の下に集まってくれている方や、オオサカポテトに融資してくれているファンドに、隠し事をするのは得策ではないんですよ。
なるべく細部までぶっちゃけていますので、就農を考えている方は、ぜひ私のYouTubeもチェックしてくださいね!



なるほど、参考になりました!


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