大学中退後、地元の山口県阿武町で新規就農
少数精鋭の部会で作るスイカ
JA部会の中で、EC直販部門を立ち上げる
山口県阿武町の梅田将成(うめだ まさなり)さんに、
新規就農した経緯や、スイカ栽培のこだわりや苦労についてを伺いました!
就農経緯:地元の山口県阿武町に戻って新規就農
管理人梅田さんはどのような子どもでしたか?



明るい少年でしたが、両親が公務員ということもあり、
「ちゃんと勉強して、ちゃんとした会社に就職しなきゃ。」
という考えは常に頭のどこかにありました。
だから地元の進学校を卒業した後は、社会科の先生を目指して、鳥取大学に進学しました。



「ちゃんとした生き方をしないといけない」というプレッシャー、分かる気がしますね。



だけど大学3年生の時に、鬱っぽくなって眠れなくなってしまったんです。
周囲が就活や公務員試験の勉強をする中で、授業にも出られませんでした。
「ちゃんとした社会人にならなきゃ。」
という使命感が、焦りになっていたんだと思います。



ただ、授業に出れずにふさぎ込んでいた時に、〈里山資本主義〉という本に出会ったんです。
「個性を認めてくれる場所は、地方にこそある。」
という内容が、挫折した私にとって、とても勇気づけられましたね。
結局大学は中退することになりましたが、前向きな気持ちで地元である山口県阿武町に戻り、仕事を探し始めたんです。



悩んだ時期を乗り越えて、地元に戻られたのですね。
阿武町では、どのような仕事を探されたのですか?



田舎町に戻ったものの、どんな仕事をしたいかは特に決めていませんでした。
「まずは地域の役に立てるような仕事を探そう!」
と思って、2017年に後の師匠となる、隣のスイカ農家の手伝いから始めましたね。



一発目の仕事から、スイカ栽培を引き当てたのは、運命かもしれませんね!
ところで梅田さんは非農家と言うことですが、初めてする農作業はどうでしたか?



何もかもが初めての作業でしたから、師匠についていくのに必死でした。
ただありがたいことに、研修中から師匠やスイカ部会全員が手厚い配慮をしてくれたんです。
スイカ100本と資材費を出してくれて、栽培の実践練習をさせてもらえましたし、
最後に糖度検査を合格したものは、私の名前で出荷して良いことにもしてもらえたので、農業の基本を学べました。



えっ、めちゃくちゃ好待遇じゃないですか!



師匠や部会のおかげさまです。
しかしそれ以上に、「おいしかったよ!」とお客様に言ってもらえたことが嬉しくて!
「自分が作った作物が、感動を与えられたんだ!」
と、農家になる決め手になりましたね。



おいしかったと言ってもらえるの、嬉しいですよね!
ただ新規就農となると、農地確保で苦労するイメージです。
梅田さんはどのように農地を確保されたのですか?



私の場合はタイミングよく、2018年から20棟のハウスを、近くの農業法人から借りられたんです。
農機も周りの農家さんから借りられたり、譲ってもらうこともあって、新規就農時は恵まれていたと思います。



ハウスもスムーズに借りられて、農機も融通してもらえたんですね!
就農時の資金が少ない時期は、すごく助かると思います。
あとは、その他の運転資金などは、どのように工面されたのですか?



当時あった、山口県独自の新規就農者支援制度を活用させていただきました。
その資金を、ビニールの張替えやスイカの種苗費や肥料費などに充てましたね。



なるほど。
しかし地元で農業という梅田さんの選択に、ご家族はどのような意見だったのですか?



中退して新規就農した私に対して、両親は色々思うことはあったと思いますが、
「頑張って続けてみろ。」
というスタンスで見守ってくれていました。
福賀すいか部会からも、次世代の農家という期待を受けていましたし、
「私がスイカ部会を盛り上げてやろう!」
という気持ちで農業をしてきました。


栽培:大きくて甘い、スイカ栽培のこだわり



では、現在の栽培はどんな感じですか?



計36aのハウスで、春夏はスイカ、後作でほうれん草を栽培しています。
基本は私1人で作業していて、母親が手伝ってくれる日もあります。



ほぼ1人で、36aものスイカ!
スイカ栽培のこだわりはなんですか?



とにかく大きくて甘いスイカを、福賀すいか部会全員で目指しています!
・1株1果しかつけない
・着果後収穫20日前には灌水を絶つ
最長で30日前には水を絶つ作型もあり、じっくりと大きくするのが特徴です。



大きくて甘いスイカ、おいしそうですね!
そんなスイカ栽培で、苦労や失敗されたことはありますか?



やっぱり就農当初は、交配して残す実を、見極めるのが難しかったです。
いい実だと思って残しても、ハウスの外側に近い実だと、中山間地の寒さで思うように生長しないこともあるんですよ。
スイカを手で叩いた時に、私だけいい音が響かないのは悔しかったですね。



1株1果だと、残す実を見極めるには、熟練が必要なんですね。



その通りで、どの実を残すかが、スイカ農家の腕の見せ所なんですよ。
栽培の講習会で勉強したり、師匠の経験を取り入れたりして、数年経って納得のいくスイカが出来るようになりました。
現在は「13キロ以上、糖度は12.5度以上」を個人的には狙っています。



おお、さらに上のレベルを目指せるようになったのですね!
では、栽培面の今後の課題や目標はありますか?



栽培年数を重ねるごとに、土壌の肥料の残り方も違ってきています。
丈夫で樹勢がいい株を育てるためには、窒素成分が多すぎてはダメなので、
1ハウスの中で何か所も土を取り出して、土壌の変化を毎年見極めることが課題です。


販路:小規模の部会の中で、ECサイト販売を立ち上げ



現在の販路はどんな感じですか?



スイカもほうれん草も、全てJAに出荷しています。
福賀すいか部会を通して、部会員6名が会議で販売先の割合を決めています。
「福賀すいか」という、すでにブランド作物になっている部会に入れてもらったのは、私には幸運でした。



あれ、全てJA出荷ですか。
SNSやブログなどで、ECサイトをPRされているので、自分でも販売されているのかと思っていました。



ああ、あれは私のサイトではありません。
福賀すいか部会の中で、私がECサイトを立ち上げて運用しているんです。
元々福賀すいか部会は、FAXで直販対応をしていました。
だけど若い世代にも福賀すいかを知ってもらうには、ECサイトの立ち上げが必須だと考えたんです。



部会のECサイトを梅田さんが運用しているのですね!
運用していく上での、苦労はありましたか?



苦労と言いますか、「薄利多売はしない」ことが、福賀すいか部会の方針です。
福賀すいか部会は6名しかおらず、1シーズンでわずか10000玉、全国シェアは0.035%ほどしかありません。
中山間地で大量生産がしにくい環境ですが、その分大きくて甘いスイカにこだわっており、スイカを通して感動を与えられる自信がありますよ!
EC販売を始めた2020年は100件を超える注文があり、現在は毎年約500件の注文が来ます。



部会としても、着実にECでの販売数や認知度を伸ばしているのですね!
それにしても、栽培にこだわったスイカを、自分で売ることは考えないのですか?



直販は考えていないですね。
JAの仕組みが偉大過ぎるんですよ(笑)。
新規就農の私が、
・販売先への営業
・梱包資材の購入、事務作業
・選果スペースの確保
などは、労力とコストがかかりますから。


目標やアドバイス:地域の方からの信頼を積み重ねる



梅田さんの今後の目標は何ですか?



まずは、常にスイカの品質向上を目指して、福賀すいか部会を支えたいです。
その上で農業以外にも、感動してもらえる仕事があれば、挑戦したいですね。



ありがとうございます。
最後に、就農希望者の方にアドバイスがあればお願いします。



「地域の方からの信頼を、どれだけ積み重ねられるか」
が大事だと思っています。
私は師匠の元で1年間、ほぼ毎日農作業をしました。
品質の妥協や甘えが許されない環境を自分に課したから、栽培レベルが上げられたと自負しています。
ハウスや農機具を借りられたのも、周りの農家の信頼を積み重ねられたからだと思いますね。



信頼を積み重ねることが、自分にプラスになるのですね。
経費が高騰している今の時代に、ハウスや農機を全て新品で揃えようと思ったら、大変なことですからね。



それともう一つは、副業的に小さく農業をスタートさせることも検討したほうがいいです。
私も2017年は師匠のスイカ栽培を手伝いながら始めたおかげで、独立した2018年に売上300万円を立てられましたから。
最初から農業だけで生計を立てるのではなく、農業バイトなどをしながら、地道に拡大していくのもアリだと思います。



梅田さんの実体験を経た意見だと、説得力がありますね!
取材させていただきありがとうございました。




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