仕事を辞めて夫婦で就農。ナスの産地復活を目指す、泥臭い若手農家の挑戦。

記事の内容

父親の農業を手助けするために夫婦で就農

伝統的な産地で栽培されるナス栽培

ナスの規格を押し通して、評価を得る

奈良県広陵町の「乾農園」の古川真知(ふるかわ まち)さんに、就農までの経緯や栽培のこだわり、販路開拓などを取材させていただきました!

目次

経緯:夫婦で親元就農→その後独立

管理人

古川さんは農家の娘だったそうですが、子どもの頃の農業のイメージはどうでしたか?

古川さん

ナスや米などを栽培する農家の娘でしたが、正直農家はいいイメージがなかったです。
生計を立てるために頑張ってくれているのは理解しつつも、泥だらけの軽トラで迎えに来ないでほしいと思っていました(笑)。

管理人

軽トラの送迎が嫌なの、なんか分かりますね…(笑)。
農家になる前はどんな仕事をされていたのですか?

古川さん

私は子どもが好きだったので、短大に進み、保育士の免許を取りました。
保育士はピアノが弾けないとダメなので、高3からピアノ練習を始めて。
短大卒業後は、大阪の私立保育園で働いていました。
主担任も任されて、忙しくも充実した日々でした。

管理人

高校3年生からピアノ、保育士になるためにすごく努力されたのですね…!
保育士を辞めて農家になるきっかけはあったのですか?

古川さん

母や祖父母が立て続けに他界し、心身ともに疲れ切ってしまった父を放っておけなかったんです。
父の相談に乗ったり、土日に手伝ったりするうちに、
「家族として父の人生を支え、この場所を一緒に守っていきたい。」
と強く思ったので、2020年に保育士を辞めて、夫婦で就農しました。

管理人

お二人とも仕事を辞めて就農されたのですね。
旦那さんは当初、どんな話し合いをされたのですか?

古川さん

コロナ渦で増えた時間で、夫が少しずつ畑を手伝ってくれるようになりました。
今がタイミングかもと、
「数年収入がなくても私の貯金を使っていい。二人ならやっていける!」
と、夫に私の覚悟を伝え、夫も就農してくれました。

安定した未来よりも、不安定だけど天井がない自営業の「可能性」に賭けたかったですし、
自分の人生から逃げずに生きたかったんです。

管理人

旦那さんも農業に積極的で良かったですね!

古川さん

ただ父とは、農業経営や日々の作業で、意見が割れるんですよ。
「栽培も経費も整理して、利益や給与もきっちり出るように変えよう!」
と夫婦で決心して、2024年に父親とは経営を分けることにしました。

もちろん、お互いが困った時には、協力するようにしていますけどね。

管理人

世代間で意見が違うのは、親元就農あるあるですよね。
夫婦で独立ということですが、不安はありましたか?

古川さん

そうですね。サラリーマンに比べたら安定していないし、不安はありました。
「あの若い子らにできるやろか?すぐに辞めるんちゃう?」
とか、周りに言われていたと思います。
それでも諦めたら終わりだと励まし合って、栽培も販路も改善していきました。

ナスの手入れをする真知さん

栽培:品目をナスに絞り、数種類のナスを栽培

管理人

では、現在の作型や労働力を教えてください。

古川さん

2024年まではトウモロコシやブロッコリーも栽培していました。
現在は夫婦2人で、半促成栽培のナスが20a、露地ナスが20aと、ナス1本に絞って栽培しています。

管理人

2人で計40aのナス!多いですね!
品目をナスに絞った理由はなんですか?

古川さん

父親から引き継いだ品目でもありますし、一昔前まで広陵町は、ナスの産地だったんですよ。
現在ではナス農家は数名しかいないんですけど、ナスだけで生きていけることを証明しようと話し合って。
・大阪のナス農家さんを訪ねたり、
・インスタの農家さんの誘引資材を取り入れたり、
試行錯誤しながら、ナス栽培を改良していきました。

古川さん

他にも就農当初は千両2号という品種がメインだったんですけど、現在は「あのみのり2号」という品種に変えました。
単位結果性が強く、ピカピカの見た目も味もいいナスです。
白ナスとゼブラナスも、少量ですが栽培を始めました。
ナスはどうしても地味なイメージを持たれがちですが、ナスだってこんなに美しくてワクワクするものだと知ってほしくて。

「ただの野菜」ではなく、食卓を彩る主役として、一度見たら忘れられない体験を届ける入り口にしたかったからです。

管理人

ナスの品種から、こだわって改善してきたのですね。
栽培面を変革していく中で、失敗はありましたか?

古川さん

もう、たくさん失敗してきましたよ(笑)!
トウモロコシやブロッコリーを栽培していた頃は、用水の水が溢れて畑に流れ込んで全滅したこともありました。
1年目の半促成ナス栽培は、放置していたハウスの土作りができていなかったせいで、全く実もならなかったです。

管理人

何年も栽培しなかった土は、たぶん作りにくくなっているでしょうね。

古川さん

本当にそうでした。
だから土壌分析をして、有機質肥料を中心に適切な施肥をしました。
「筋トレと一緒で、肥料も適切で良質な栄養を与えれば、土も強くなる!」

と、夫は特に土作りにこだわっています(笑)。

管理人

筋トレと土作りは似てる!?
分かる…、気がしますね…!
あとは栽培に関して、取り組んでいる課題はありますか?

古川さん

半促成と露地のナスの作業が被る6、7月は、もう早朝から晩まで、ヘッドライトをしながら作業しないといけなくて。
繁忙期でもナスの管理を遅れないように、袋詰めの雇用など、工夫をしていきたいです。

あのみのり2号の栽培風景

販路:直売所→仲卸や飲食店に。大きめのナスの規格を貫いた裏話

管理人

ナスの販路はどんな感じですか?

古川さん

就農当初は直売所でしたが、現在はスーパーの仲卸をメインに、飲食店、ホテル、給食へ出荷しています。
毎週決めた量を、各納品先に出荷する感じですね。

管理人

直売所から販売先を変えた理由はなんですか?

古川さん

直売所がダメだったわけではなく、お客様が自発的に、私たちのナスを飲食店などに宣伝してくれたんですよ!
「乾農園さんのナス、おいしいから使ってよ!」
という感じで広まって、ありがたい限りでした!

管理人

お客様が自発的に?
それだけ味がいいということですね!

古川さん

おかげさまで営業はほぼしていないんですけど、代わりにマルシェには積極的に参加するようにしています。
お客様との出会いや縁は、大切にしたいので。
だからマルシェ開催日の土日を空けるために、作業の段取りを逆算して前日までに気合いで終わらせます!

管理人

「栽培に専念したい。」という農家も多いと思いますが、乾農園さんは積極的にマルシェに参加されるのですね!
ただ販路が広がっていく中で、苦労もあったと思いますが?

古川さん

苦労というか、色々な業者と交渉では、
「180g〜200gの、大きなナスを納品する」という主張は曲げませんでした。
ナスをメイン食材として使ってほしい気持ちもありましたし、他の産地のナスと並んだ時に、印象に残るようにしたかったんです。
もちろん、断られた業者もありました。
だけど最初は渋々だった業者も、今では大きめのナスの方がいいと、評価してもらっています。

管理人

大きめのナス、ニーズがあるのですね!
差別化をかなり意識されて販売されているのですね。

古川さん

差別化、めちゃくちゃ意識しますよ!
余談かもしれませんが、マルシェ等には、作業着ではなくおしゃれして出るようにしています。
カジュアルな服装の方が、お客様とも話しやすいと思うので!

マルシェにはカジュアルな服装で

目標やメッセージ:広陵町をもう一度ナスの産地に!

管理人

今後の目標はありますか?

古川さん

ホテルや飲食店との取引も増えたらいいなと思いますし、いずれは農林水産大臣賞を受賞できるほどのナス栽培の技術を身に付けたいです!
権威ある賞をいただければ、広陵町のナスも有名になると思うので!
2024年に広陵町でもナス部会が立ち上がりましたが、まだまだ他産地と比べたら少数です。
広陵町でまたナス畑が広がるように、ナスの産地を盛り上げていきたいです。

管理人

応援しています。
それにしても、古川さんは泥臭いのが嫌だったということですが…、
ピアノを練習したり、栽培や販売で試行錯誤したりと、泥臭く農業をされていますね!

古川さん

たしかにそうですね(笑)!
子どもの頃は、泥臭いのが嫌いだったと思います。
だけど私も意外と泥臭いことをやってきてて、今やってる農業も泥臭いけど、そんな自分が嫌いじゃないです。

管理人

かっこいいと思います!
最後に、就農希望者の方にアドバイスがあればお願いします。

古川さん

私も就農して5年、まだまだ道半ばで偉そうなことは言えませんが…。
正直、農業はしんどいことがほとんどかもしれません。
でもその分、上手くいった時の喜びは格別で、何物にも代えがたい瞬間があります。

諦めそうになることが何度もあると思いますが、とにかく根性!
続けてこそ改善策が見えてくることがあります。一緒に頑張りましょう!!!

ナスの収穫をする敏之さん
画像提供、農家さんのリンク
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