ECサイトでの大玉トマト直販が大人気に!岐阜県飛騨高山市の新規就農者の取り組みが面白い!

記事の内容

大学中退→飲食業→新規就農

直販でのトマト販売が人気に

六次産業化や収穫体験などの取り組み

今回インタビューした農家は、岐阜県飛騨高山市のまるかじり農園代表の石垣拓(いしがき たく)さんです。

大学中退→飲食業→地元である飛騨高山市に戻って新規就農!

ECサイトでの販売や六次産業化にもチャレンジする石垣さんの、就農までの経緯や栽培と販路などについて取材しました!

目次

大学中退→飲食業→農業の世界に

ナス男(筆者)

石垣さんはどのような子どもでしたか?

石垣さん

自分は幼い頃に両親が離婚して、色々な事情で祖父母に育てられたんです。
なかなか難しい家庭環境でしたが、祖父母や親戚に温かく接してもらったおかげで、明るく楽しい学生時代を過ごせました。
今思い返せば、周りの人に恵まれて超ラッキーだったと思いますね。

ナス男(筆者)

複雑な家庭環境の中でも、楽しく過ごされていたのはすごいことだと思います!

石垣さん

楽しかった学生時代でしたが、一方で普通科目の勉強には疑問を持っていました。
「数学とか歴史とか、社会に出て役に立つのか?」
と、サラリーマンの養成教育のような義務教育はつまらなく感じたんです。
だから、「将来は経営者になりたい!」と漠然とした夢を掲げて、実用的な勉強ができる商業科の高校に進学しました。
ビジネスや簿記の勉強はやりがいがあって、勉強に身が入った記憶がありますね。

ナス男(筆者)

誰しも中高生の時は、勉強する意味を考えますよね。
経営者になるために、その後はどのような進路をとられたのですか?

石垣さん

それがですね……経営学部のある大学に進学したのですが、半年で中退してしまいました(笑)。
経営の授業も商業科の高校の授業と似たような内容でしたし、キャンパスの雰囲気にも馴染めなくて。
「お金をかけて大学に行くのがバカらしい!自分の商売を始めるのにもお金が要るし、働きながら実戦経験を積もう!」
という考えに至り、当時バイトしていた飲食店で契約社員として働き始めました。

ナス男(筆者)

大学を卒業してからではなく、大学を辞めて現場での経験を積みながら経営者の道を目指したのですね。
飲食業の仕事は充実していましたか?

石垣さん

充実していましたね!
契約社員から順調に社員に昇格して、正直給与も良かったです。
実は、上司からヘッドハンティングのお話ももらっていました。
「オレがオーナーになるから、お前は共同経営者として店長をしてくれ!」というお誘いで、当初自分も受けるつもりだったんです。

ナス男(筆者)

なんと、経営者になる夢は目前だったんですね!
しかし一転して飲食業を辞めて、地元の飛騨高山市に戻ったと聞きました。
飲食業の経営者の話を断った理由はなんでしたか?

石垣さん

飲食業は肉体的にもハードでしたし、深夜まで働くことも当たり前だったんです。
そんな夜型の生活が続いて注意散漫になり、バイク事故を起こしてしまったことが、共同経営者を諦めるきっかけになってしまいました。
足の骨を折って全治半年、一歩間違えば命を落としていたと思います。
「もう自分は夜型の働き方は向いてないので、飲食業の起業は諦めます。」
と上司に断って、リハビリも兼ねて地元の飛騨高山市に戻り、職を探すことになったんです。

山間の農地にあるビニールハウス
ナス男(筆者)

大変なケガでしたね、でも命があって何よりです。
心機一転、飛騨高山市で仕事をされるわけですが、農業を選択した理由はなんでしたか?

石垣さん

地元に戻ってきた当初から農業だけに絞っていたわけではありませんが、田舎にはそもそも求人が少ないんですよね。
その少ない選択肢の中で、研修先になる農園の求人を見つけたんです!
「農業はやったことないジャンルだし面白そう!初期投資も飲食業ほどにはならないだろうし、朝方の生活も自分には合ってると思う!」
と考え、農園の社長に直談判して、2011年から研修生として働くことになりました。

ナス男(筆者)

農業での起業が目標になったわけですね。
どのような作物を栽培、研修されていたのですか?

大玉トマトの研修を経て独立

石垣さん

自分が研修したのは、夏秋トマトとしいたけを生産する、地域で一番大きな農園でした。
「30aくらいのトマト栽培を回せないと、収入的にも厳しいよ!」
と何度も社長に発破をかけてもらい、研修2年目からは自分が中心になって、30aの夏秋トマトをアルバイトの方とともに回しました。
「とにかく作業をこなして、体で技術を覚えないと!」
という研修生活で、技術的にも体力的にも鍛えられましたね。

そして3年間の研修を終えた2014年に、独立して新規就農したという流れです。

ナス男(筆者)

晴れて念願の経営者になれたのですね、おめでとうございます!
ところで気になるのが、お金の面です。
就農当初の資金はどうやって工面しましたか?

石垣さん

準備型と開始型の就農補助金に加えて、自己資金が200万円と、600万円の融資を受けました。
(融資600万円の内訳は、種苗肥料農薬費などの初期コストが300万円、30aの雨よけハウス建設費用から建設補助金分を引いた300万円)
就農準備資金・経営開始資金:農林水産省 (maff.go.jp)

ナス男(筆者)

就農当初に、お金や栽培面での不安はありましたか?

石垣さん

ずっと目標にしてきた経営者になれましたが、正直お金や色々な面での不安はありましたよ。
ただ自分の選択した飛騨高山の夏秋トマトは、新規就農者に推奨されるくらい売上がある程度見込める作物でもあります。
だからまずは30aの雨よけハウスで、JAに販売できるだけのトマトをしっかりと作ることに集中しようと思いました。

飛騨高山の特産品の夏秋トマト

飛騨高山での夏秋トマト栽培

ナス男(筆者)

飛騨高山市の特産品であるトマトで、就農をスタートされたのですね!
それでは、現在の栽培作物や労働力はどんな感じですか?

石垣さん

就農時と変わらず、30aの雨よけハウスで主に夏秋トマトを栽培しています。
主な労働力は自分と箱詰めのアルバイトの方1人で、収穫と栽培管理全般を自分がしています。

ナス男(筆者)

栽培に関して失敗したことはありますか?

石垣さん

就農して2,3年目の時に、今の30aの夏秋トマトを、さらに規模拡大してやろうとしたのは大失敗でしたね。
当時あった機械の購入補助金を利用して、25馬力のクローラートラクターと深耕ロータリーを買ったのです。
その補助金が適応されるには規模拡大が絶対条件で、ちょうど20aのハウスが借りられる縁が重なって……
「購入補助金とハウス面積の拡大がタイミングよく重なるなんて、チャンスだ!」
と、無理やりハウスを20a増やしたんです。
案の定、キャパオーバーでしたね。

ナス男(筆者)

就農当初に30a+20aの拡大。
かなりの面積の急拡大ですね。
何が失敗の要因だったと、石垣さんは考えられていますか?

石垣さん

とにかく人手と時間が足りずに、管理が回らなかったのが原因です。
雇用を増やせば何とか回ったかもしれませんが、当時は自分に気力と雇用体系を作る考えが足りませんでした。
しかも借りたハウスは、既存の30aのハウスから車で30分ほど離れた所にあったんですよ!
ハウスの行き来の時間も、無視できないくらい手痛いロスでした。
出荷量が多くなることを見込んで2トントラックも買ったんですけどねえ…。
20aの借りたハウスも返して、購入した2トントラックも残念ながら手放しちゃいましたね。

ナス男(筆者)

ハウス間の往復に1時間かかるのは、地味に痛いですねえ……。
手痛い失敗だった規模拡大の経験から、今後はどのような方針でトマトを栽培される予定ですか?

石垣さん

今の30aの夏秋トマト栽培をベースにして、アルバイトの方を数名増やす予定です。
アルバイトの方にトマトの収獲を完全に任せて、浮いた時間で自分は葉欠きや管理作業に集中し、反収を上げようと考えています。

ナス男(筆者)

なるほど。
今あるハウスの栽培を、より強化していくということですね。

トマトの直販はメディアにも取り上げられるほどの人気に

ナス男(筆者)

現在の販路はどんな感じですか?

石垣さん

JAに8割、ふるさと納税とメルカリショップスで2割くらいですね。
ふるさと納税で年間500件、メルカリショップスで1200件ほど注文を受けています。
JA出荷することがこれからもメインですが、まるかじり農園の宣伝も兼ねて、2021年から直販を始めました。

ナス男(筆者)

え!直販の件数、めちゃくちゃ多いですね!
ふるさと納税とメルカリショップス、それぞれに売りに出すきっかけや狙いはなんでしたか?

石垣さん

飛騨高山という自然豊かな地域は、全国でもネームバリューは抜群です!
ふるさと納税でも飛騨高山市は人気なので、利用しない手はないだろうと。
あとメルカリショップスを利用し始めたのは、他の農家との競合を避けるためです。
人気のある産直ECサイトを利用する選択肢もありましたが、すでに何百件という農家が登録して作物を売っているので、後発組の自分が入れるスキがないように感じていましたから。
そんな時にメルカリが農作物のEC販売を開始するというタイミングでしたので、自分はメルカリショップスで勝負しようと思いました。

石垣さん

あとはふるさと納税もメルカリショップスも、「訳あり品」というカテゴリーが人気なんです。
食べられるけど見た目が悪いものは、やっぱり消費者の方にも需要があるんですよ。
自分も訳ありトマトを販売したところ、メディアやメルカリショップスの本営に取り上げてもらったこともあり、一気に注文が多くなりました!

不揃いの「訳ありトマト」
ナス男(筆者)

メディアやECサイトの宣伝効果って、やっぱりすごいんですね!
でも訳あり品って、いわゆる「規格外品」も含まれていますよね?
野菜の規格外の流通には、品質や正品とのバランスなど、批判的な声もあるかと思いますが……?

石垣さん

もちろん、むやみやたらに規格外を格安で売っているわけではありませんよ!
安売りしたら直販をしている意味もなくなりますし、ちゃんとしたトマトも買われなくなる可能性がありますからね。
まるかじり農園の場合は、輸送時にダメになってしまうようなトマトは当然省いて、ちょっとの変形果を1㎏400円ほどの売上を見込んで手詰めしています。
訳あり品の販売は、農家もお客さんも、お互いに納得した価格や品質で取引できるかどうかがコツだと思います。

ナス男(筆者)

規格外野菜の特徴や批判も全て分かった上で、石垣さんは販売されているのですね!

収獲体験やドレッシングの加工品も

ナス男(筆者)

まるかじり農園さんは栽培の他にも、様々な取り組みをされていると聞きました。

石垣さん

そうですね、代表的なもので言えば、トマトの収獲体験をしています。
子どもたちにトマトがどのように育っているのかを知ってほしいですし、実際に来て触れて、新鮮なトマトのおいしさを知ってほしいですからね。
子どもの付き添いとして保護者の方も来ていただけるので、宣伝や求人にもつながることも期待しています!(笑)

ナス男(筆者)

トマトの収穫体験はあまり聞かないので、斬新ですね!

石垣さん

あとはトマトと飛騨高山の野菜を原料とした万能ソース「カジるソース」を製作しました!
・トマトジュースやケチャップはすでに他の農園さんが作っているから、自分は他の商品で勝負したい。
・飛騨高山市の作物を使って、地元の農家も巻き込んだ商品を作りたい。
ということで、有名なシェフの方にレシピを監修していただき、加工工場に原料を持ち込んで作っています。
農園のトマトの宣伝と、冬の農閑期の売上になればいいなあと考えていますね。

シェフと開発した万能ソース「カジるソース」
ナス男(筆者)

いわゆる、六次産業化ですね。
でもトマト栽培以外への取り組みは、周囲の人から色々言われたりしませんか?

石垣さん

周りの人は自分に対して、色々言ってるのかもしれませんが……
自分は周囲の声は気にしないですし、関心がありません(笑)。
トマト栽培はもちろん、収穫体験も六次産業化も、試行錯誤していくのに精いっぱいなので!
「噂話は勝手にどうぞ。」という感じですね!

今後の目標や就農希望者に対してのアドバイス

ナス男(筆者)

ここまでお話を聞いてきて、石垣さんはものすごくポジティブな方という印象ですね。

石垣さん

ポジティブかなあ(笑)。
ただ本当に、自分はラッキーな人間だとは思っていますね。
・「親ガチャ失敗」しても祖父母や親戚が良くしてくれたし、
・バイク事故を起こしても生きているし、
・色々失敗しても、なんだかんだ農業が続けられているし、
・妻と出会えて結婚できて、子どもが生まれたのも奇跡だし、
色々なラッキーに感謝しながら、これからも農業を続けていきたいですね。

ナス男(筆者)

ありがとうございます。
最後に、石垣さんのように新規就農を志す方にアドバイスがあればお願いします。

石垣さん

とにかく初期投資は抑えろ!ということですね。
「最速でデカい売上を出す経営者になりたい!」と自分も気がはやって失敗しましたから。
まずは適切な規模と中古の農機具があれば利用しながら、自信や余裕ができたら、規模拡大をすればいいのではないでしょうか。

ナス男(筆者)

取材させていただきありがとうございました!

「そのまま、まるかじりできる。」がコンセプト

こぼれ話:奥さまはウェブデザイナー

ナス男(筆者)

石垣さんの奥様は、農業とは別の仕事をされているのですね。

石垣さん

そうですね。
妻は出会った当初からウェブデザイナーとして働いていて、家庭を支えてくれています。
・クリックしたくなる配置
・まるかじり農園のこだわりが分かる説明文
・パッと目が留まる鮮やかなトマトの画像
農園のHPもメルカリショップスの農園ページも、創意工夫を凝らして妻が主に作ってくれました。
だからメディアに取り上げてもらってトマトが売り切れた時は、自分以上に妻が喜んでいました!

ナス男(筆者)

農園のことを正確に理解してくれて、素晴らしいウェブ制作をしてもらえる方がいるのは、まるかじり農園さんの強みですね!

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