新規就農から10年で地域でも有数の大規模農家に!八街の露地農家が描く将来の展望

記事の内容

八街で新規就農してから順調に露地野菜の規模を拡大

イベントや農家民泊の事業にもチャレンジする狙い

今回インタビューした農家は、千葉県八街市の米田将之さんです。

千葉県八街市に移住して新規就農してから着実に規模を拡大してきた米田さんに、就農までの経緯や農家民泊事業に参入した狙いなどについて取材してきました!

目次

外食産業から農業法人への転職を経て、千葉県八街市で新規就農

ナス男(筆者)

農業に興味をもったきっかけは何でしたか?

米田さん

元々自然が好きで、家族で自然に囲まれた中で生活したいなあという夢があったので、農業という職業に自然と興味を持ちました。
みんなと違う進路に進みたいという、あまのじゃく的な学生でしたから、兵庫県から北海道の農業系の高校と大学に進学しました。
北海道でのバイトも、ブロッコリーの収獲などをしていましたね。

ナス男(筆者)

北海道へ高校生で下宿されたということですか?
当時から行動力がずば抜けてますね……!
31歳で就農されたとのことですが、大学卒業後すぐに就農されたわけではなかったのですね。

米田さん

高校大学での授業や農業バイトなどで、「農業は自分に向いている」とは思っていたのですが、いきなり大学卒業して農業法人への就職や就農をしようとは思えなくなってきたんですよね。
農業って、やっぱり他の産業と比べてイメージ良くないじゃないですか。(笑)
ブラックに近い労働環境、給与も低い水準、どことなく閉鎖的なイメージ、とか。
農業をしたくてずっと農業系の勉強をしてきたけど、将来農業をするにしても、一度他の産業で働いておかないといけないという危機感に似た感情が勝りましたね。
なので大学卒業後は、一旦大手の外食産業の企業に就職しました。

ナス男(筆者)

たしかに他の産業と比べて、農業は「3K」のイメージを抱く方は多いでしょうね……。
22歳で新卒してから就農までは、どう過ごされましたか?

米田さん

外食産業の企業では、売上目標の厳しさも当然あったのですが、店舗の運営の仕方やパートの方の雇用管理などを身をもって学べたことは、今の農業でも活きていますね。
そして4年間働いた後、大手の外食企業に関連する北海道の農業法人に異動しました。
もちろん、自分で独立して新規就農するための勉強と準備をするためです。
異動して入った農業法人は約60haの露地野菜部門を持っていて、「若いやつが考えて、どんどんやってみろ!」という社風でした。
広大な農地面積と社風が、新規就農を目指す私には都合が良かったです!
農業法人に勤めて2年目から、キャベツやレタスなどの作付計画を自分で考えてトラクターに乗り、20haは私の責任で管理していました。

ナス男(筆者)

2年目から20haも任されていたんですね!
だいぶ頭も体力も鍛えられそうです…!
4年間その農業法人で働かれてから、千葉県八街市で新規就農されたわけですが、北海道ではなく八街を選んだ理由は何でしたか?

米田さん

千葉県八街市には、妻の実家があり、農家をしていたからです。
妻の実家の農業は義理の兄が継いでいましたが、自分が移住する近くに、少しでも伝手があった方が農地や農業機械などの情報が回ってきやすいですからね。
八街市に移住して、一年間義理の兄の農場で働きながら農地を探して、新規就農をスタートしました。

八街市の落花生は全国的にも有名
ナス男(筆者)

北海道から八街に移住されたのは、そういう理由があったのですね。
あと気になる資金面は、就農当初どんな感じでしたか?

米田さん

500万円ほどの貯金に加えて、青年等就農資金の融資が200万円、経営開始型として、150万円を5年受けることができました。
それでも1年目は、お金の不安は尽きなかったです。
農業機械の購入や、肥料農薬種苗費の運転資金として250万円がいきなり出ていきましたし。
妻にも北海道にいる時から務めていた洋服店の千葉の店舗へ転勤してもらって、家庭を支えてもらっていました。
妻には就農当初から気苦労はさせてしまっていましたが、そのおかげで今も農業ができているので、感謝しています。

順調に規模拡大した陰で露呈した管理体制の弱点

ナス男(筆者)

現在の栽培作物と規模を教えてください。

米田さん

春夏は枝豆とスイカ、秋は落花生とミニトマトとサツマイモとショウガ、冬はニンジンという栽培体系で、耕作面積は約13haですね
労働力は私と事務担当の妻、社員を含めて従業員が10名、インドネシアの技能実習生が2名です。

ナス男(筆者)

新規就農から、めちゃくちゃ順調に規模拡大しているのがすごいです!

米田さん

ちょうど地域の農家の高齢化が進んでいて、農地を手放すタイミングでもあったので、農地に関しては借りやすかったですね
八街は関東ローム層の黒ボクが広がっていて、色々な野菜が比較的栽培しやすいのが特徴です。

関東ローム層での枝豆栽培
ナス男(筆者)

栽培に関して失敗したことはありますか?

米田さん

新たに借りた畑で作ったスイカがほぼ全滅してしまって、400万円ほど損害が出た年はありましたね。
試験場にも検査に出したのですが、未だに原因が不明なのが、思い出すともどかしいです。

ナス男(筆者)

全滅でマイナス400万円はしんどいですね……。
その失敗から、どのようなことを改善しましたか?

米田さん

全滅した畑にスイカを作らないようにしたら、とりあえず解決はしましたが……
自分たちの管理体制も甘かったのが本質的な原因だと考えないと、また同じような失敗を繰り返すだろうという危機感は残ったままでした。
そこで来年度からは、栽培品目ごとの担当制にして、ボトムアップの管理体制にする予定です。
今まで自分がトップダウンで従業員に指示を出していましたが、全ての畑を自分が完璧に見切れるわけではないですし、なかなか現場からの最新の病害虫の報告が上がってきにくいと思ったからです。
栽培品目ごとの担当制にすることで、例えばスイカで言えば、最適な受粉時期とかアブラムシなどの害虫の初期発見と報告がより正確で早くなると考えています。

スイカは、米田ファームの夏の主力作物
ナス男(筆者)

なるほど。
大規模になるほど担当制にした方が、従業員の方も責任感ややりがいが出るのかもしれませんね。

販路の多角化と将来的な直販を見据えた戦略

ナス男(筆者)

現在の販路はどんな感じですか?

米田さん

全体の40%がJAで、残りの60%はスーパーの卸業者や市場、加工業者という所でしょうか。
内訳は作物によって出荷先が違います。
サツマイモは市場に出しますし、ショウガは加工業者、生協にはミニトマト、枝豆はスーパーや直売所にも並べますね。

枝豆の畑
ナス男(筆者)

かなり販路を持っているのですね。
販路を複数持つ狙いはなんですか?

米田さん

単純に出荷調整とかの手間や取引価格を見て、この作物はここに出荷しよう、みたいに決めています。
関東圏で、物流網も販路も多いので、出荷先の選択肢は多いですからね。
いくつか販路を持っておいた方が、豊作で採れ過ぎた時などの不測の事態にも対応しやすいと思っています。

ナス男(筆者)

なるほど。
今後の販路についての課題や目標はありますか?

米田さん

将来的には販売も米田ファームでやっていきたいので、野菜セットなどの個人販売向けの商品も作っていく予定です。
今力を入れている農家民泊やイベントなどをフックにして、購買につなげていきたいと考えています。

新しく始めた農家民泊
ナス男(筆者)

農業の合宿と、農家民泊!
最近始められて好評だと聞きました!
将来の直販とつながってくるのですね!

農家の合宿と、DIYで改装した古民家での農家民泊

ナス男(筆者)

「本格的に農家のバイトや農業研修などをする前に、専業農家のリアルな体験や数字を知れたらいいなあ」という需要は潜在的にあると思います。
「新規就農を知る合宿」をやろうと思ったきっかけはなんですか?

米田さん

新規就農の本やイベントはたくさんあるのですが、実際に専業農家の作業と効率性を追求した中での作業をしながら農業を深く知ることができるイベントがあればいいなあと思っていたんです。
「このくらいの強度の労働で、売上がどのくらいで、ダンボールは一枚いくらで、利益はいくら残るのか」
実際に体験しないと分からないこといっぱいあるじゃないですか!

農業のリアルが味わえるイベント
ナス男(筆者)

米田さん自身が新規就農者なので、なおさら合宿に来る方の気持ちが分かるのかもしれませんね。
合宿に来られた方に、どんな体験をしてもらっていますか?

米田さん

落花生収穫、さつまいも収穫、生姜収穫などを、我々のスタッフと同じオペレーションで作業をしてもらっています。
体験した方の感想は、「利益を出すための作業は大変で、農業は甘くはない。」がやっぱり多いですね。
だけど、そういう泥臭い所や厳しい所も含めて、農業のリアルを伝えられればと考えています。
去年は4泊5日の累計で、27人の方が体験に来てくれたので、これからもどんどん参加者は増やしていきたいと考えています。

ナス男(筆者)

ありがとうございます。
それからインパクトの強い、「農家民泊」をしようと思ったきっかけを教えてください!

米田さん

・「畑に野菜取ってきてー。」と子どもに言ったり
・季節に応じていろんな花が咲いて四季がはっきり感じられたり
農業が身近にある生活って良いなと、実際に農家になって改めて思っているんです。
都会住みで畑が身近にない人が、野菜の生産に興味を持ったときに生産を知れる環境を作ろうと思い立ったのが、古民家「然の家」を始めるきっかけです。

どこか懐かしい気持ちになる古民家
ナス男(筆者)

日常に農業を感じられることって、全員が味わえることではないですからね!
気になるのは、古民家の購入価格や改装費用なんですが……

米田さん

古民家の価格は、建物との打ち込み2500万円ほどでした。
雨漏りなどリフォームと火災報知器などの設備含め、開業費は400万円くらいでしょうか。
農作業の合間を見てDIYで、心地よく泊まれる環境に改装しました。

ナス男(筆者)

家を買って農業しながらDIYするとは……!
「然の家」の現状はどんな感じですか?

米田さん

一日人家族限定で、ピザ窯やBBQコンロ、然の家の前の畑の野菜は自由に使ってくださいというルールにしています。
枝豆の収穫を初めてしてもらう家族連れの方に、「枝豆って畑でこういう風に育つんだ!」って喜んでもらえると、こちらもうれしくなりますね!
2024年に開業したばかりですが、エアビーアンドビーでは、スーパーホストにもランクされました!

都会では味わえない新鮮な野菜のおいしさと収穫体験

今後の目標や就農希望者に対してのメッセージ

ナス男(筆者)

「然の家」の宿泊予定がほぼ埋まっているのも、納得です。
米田ファームの今後としては、どのような展望を描いていますか?

米田さん

「然の家」でお客さまが満足して利益が出れば嬉しいですし、その先で農家民泊やイベントが米田ファームのPRにつながれば最高ですね!
農家を10年以上やってきてつくづく感じるのが、「野菜はそう簡単に付加価値を付けたり差別化できない。」ということです。
一農家では価格交渉もまだまだ弱く、ブランド化のノウハウは野菜の価格を上げることに関しては、ことごとく通用しないので。
どの農家もおいしい野菜をこだわって売っている中で、どうやって自分たちの野菜を宣伝するか。
米田ファームのような、「泊まれる農家」をコンセプトにした農家が一件くらいあっても面白いじゃないですか!

ナス男(筆者)

参考になります、ありがとうございます。
最後に、就農希望者にメッセージがあればお願いします。

米田さん

農業は楽ではなく、簡単に利益が出るわけでもありません。
経費も毎年上がっていますし、確実に農業への参入は厳しくなっています。
「新規就農者って必要?」みたいな逆風も感じることもあるでしょう。
だけど私は、今もう一度新規就農し直しても軌道に乗せる自信はありますよ!
「いい野菜を作ってお客さまに喜んでもらいたい!」という想いが強ければ、農家で飯を食っていけるようになるはず!
失敗は、するもの!
失敗に関して深く悩んだこともなければ、周りの反応や声が気になったこともありません。

「然の家」をバックに、従業員さんたちと撮った一枚
ナス男(筆者)

取材させていただき、ありがとうございました!

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