完熟イチゴの美味しさに惚れて、夫婦で新規就農
糖度と美味しさを研究した栽培
完熟イチゴを提供するために、直販に振り切る
静岡県島田市のありすふぁーむ代表の渡瀬豊(わたせ ゆたか)さんに、新規就農の経緯や、完熟イチゴの栽培や販路などを伺いました!
就農経緯:完熟イチゴの美味しさに魅せられて、農家を目指す
管理人渡瀬さんはどんな学生でしたか?



静岡県浜松市で生まれ育って、明るい性格で、人と同じことをするのが嫌いな子どもでした(笑)。
親戚がミカンやホオズキなどの農家をしていて、手伝いもしていましたが…、
農作業は大変だし、若者がやる職業というイメージではなかったですね。



農業にはいいイメージがなかったのですね。
農家になる前は、どんな仕事をされていたのですか?



高校卒業後は、浜松市の船舶のエンジンを製造する会社で、2年間働いていました。
ただ浜名湖競艇を観に行った時に、ビビッと来たんです。
「カッコいい!オレは船舶を作る側じゃなくて、乗る側になろう!」
と思い立って、競艇選手を目指すことにしました!
1度目の受験は落ちたのですが、25歳の時に2度目の受験で合格して、競艇学校に入学したんです。



仕事を辞めて、競艇の道に進んだのですね!



だけど…、ボートを扱う実習中に、膝の半月板を損傷してしまって…。
授業についていけないということで退学、ショックで鬱状態になり、半年ほど引きこもってしまいました。



夢が破れたショック、辛いですね。
メンタルを立ち直せたきっかけは何でしたか?



27歳の時の高校の同窓会で、妻と再会したんです。
妻が寄り添ってくれたおかげで、明るさが戻って、2013年に妻と結婚しました。
当初は家庭を支えるために、私は介護の仕事に就く予定でしたね。



素晴らしい奥さまですね!
介護の仕事に就く予定から一転して、農家を目指すきっかけがあったのですか?



たまたま知り合いのイチゴ農家の所に手伝いに行って、完熟のイチゴの美味しさに、私たち夫婦は衝撃を受けたんですよ!
私は正直、イチゴは青臭くて苦手な食べ物だったんです。
だけど、「感動するような美味しさのイチゴを私たちも作りたい!」と、夫婦で新規就農を目指すことにしました。



夫婦で新規就農、素敵ですね!
でも、いいイメージがなかった農家になることに、不安はなかったですか?



農家をしている親戚からは、
「イチゴと違って、現実は甘くないよ!儲からないから止めとけ。」
と言われました。
ただ、私たち夫婦の決意は揺らぎませんでした。
だからイチゴ農家になるべく、農家研修を受けに行きました。


経緯:静岡県島田市で、夫婦で新規就農



農家研修はどちらでされたのですか?



2014年から1年半、静岡県焼津市のイチゴ農家で栽培を学びました。
地元でのイチゴの観光農園も、検討はしていました。
だけどJA大井川に農地の相談に乗ってもらっていたので、JA大井川管轄内で、慣行のイチゴ栽培ができる空きハウスを探しましたね。



地元ではなく、研修先の地域で就農する予定だったのですね。



そうですね、たまたま島田市のバラ農家が離農したハウスが空いたので、島田市での移住と就農を決めました。
離農したバラ農家のハウスで、バラが伸び放題でごちゃごちゃになっていて、片付けるのに苦労しましたよ…(笑)。



初期投資や自己資金はどの程度でしたか?



300万円の自己資金と、青年等就農資金の融資で1000万円の融資を受けました。
3か所のハウスを修繕して、イチゴ栽培の灌水設備や自動換気のシステムを導入しました。



自己資金と融資のみ?
新規就農の補助金はもらわなかったんですか?



ちょうど熊本地震の被害があった年で、予算の関係で、新規就農の補助金はなかったんです。
まあでも、補助金を期待して事業を始めるわけではないので!
2016年から長女の名前を屋号にして、念願のありすふぁーむがスタートしました。


栽培:糖度と美味しさにこだわり、独自の栽培方法を編み出す



では現在の、ありすふぁーむさんの栽培はどんな感じですか?



3か所のハウスで計34aほどで、かおり野、きらぴ香、白イチゴなど、数種類のイチゴを栽培しています。
私と妻の叔父で、だいたい2人で栽培しています。



え、30aを超える面積のイチゴを2人で?
仕事が回らなくないですか?



いや、回るように工夫するんです。
・温度と水管理は自動管理
・葉かきは地際で切って省力化
・カフェなどで直販するので、パック詰めはしない
・実の回転を速めるための暖房機は使わない
など、作業時間のボトルネックを取り除くように、イチゴ栽培を試行錯誤してきました。



いやいや…。
パック詰めまでの省力化はできそうですけど、さすがに暖房は使わないとダメなのでは?



クリスマスに合わせて栽培していないので、暖房機は使わなくてもできていますよ。
通常のイチゴ栽培は、12月24,25日に収穫ピークを合わせるために暖房を使う意味合いがあると思うんです。
だけどありすふぁーむは、自然の温度で管理をする事で、イチゴの糖度が高めています。



クリスマス需要を狙ってないんですね。
でも暖房を使わないとなると、収量は落ちますよね?



たしかに暖房なしだと、イチゴの回転は悪くなるので、収量は1ピーク分少ないですね。
だけどありすふぁーむは、イチゴの収量はこだわってません。
私たちが感動したような糖度と美味しさの完熟イチゴを作る、そのために農業をしています。



な、なるほど…!
かなり独自の栽培をされている印象ですが、渡瀬さんは栽培面で失敗はありましたか?



小さな失敗は、研究用の小ハウスではたくさんしていますよ。
暖房機を使わないことも、研究用のハウスで試してから、本圃場で採用しました。
その他にも研究用のハウスでは、極限まで肥料濃度を薄くしてみたり、あえて病害虫を発生させたり。
あまりにも私がイチゴの実験に没頭しすぎて、妻には呆れられているんですけどね(笑)。



なるほど、小さく試すためのハウスもあるんですね。
参考になります。
販路:JA出荷→直販に全振り!



ありすふぁーむさんのイチゴは直販しているということですが、どこで販売されているのですか?



ありすふぁーむのカフェと、ECサイトやSNS、イベントなどにスイーツを出店しています。
販売部門は妻が主体で、3,4名のスタッフで運営しています。
就農当初は、全量JAに出荷していました。
だけど現在は、全て直販しています。



カフェを運営している農家も珍しいですね!
JA出荷から、直販に全振りした理由はなんですか?



もちろん、価格を決められるメリットもあります。
だけど一番の理由は、輸送中にダメにならないために、完熟前に収穫しないといけないのが嫌だったんです。
「だったら完熟で収穫して全部直販しよう!」
と決めて、2019年に空き店舗をDIYして、加工設備付きのカフェをオープンしました。



自分たちで内装外装をDIYしたのですね。
でもカフェって、設備投資の他にも、調理師免許も必要では?



妻が元々飲食店で働いていて、調理師免許を持っているんです。
完熟イチゴは抜群に美味しい反面、傷みやすいというデメリットはありますが、
自社で加工施設があれば、その日のうちに美味しい状態のまま加工品にできるのも、ありすふぁーむならではだと思います。



完熟イチゴの賞味期限の短さも、店舗があれば解決できるのですね。
でも6次産業化って、やっぱり大変だという声も聞きます。
ありすふぁーむさんは、販売面で苦労はなかったですか?



やっぱり2020年のコロナ渦で外出自粛ムードになり、カフェに1人しか来ない日は辛かったです…。
そんな絶望的な状況を支えてくれたのが、SNSのフォロワーの方々です。
完熟イチゴの栽培風景や、こだわりのイチゴスイーツを知ってもらえたことで、SNSからも販売点数が増えていきました。



SNSの発信で、コロナ渦を乗り越えたんですね。


目標:究極のイチゴを突き詰めたい!



渡瀬さんの今後の目標を聞かせてください。



売上や収益性がどうこうよりも、やっぱり「究極のイチゴ」を目指したいです。
実は研究段階ですが、イチゴが休眠するギリギリの低温で管理したイチゴは、農薬不使用でめちゃくちゃ美味しくなることに気づいたんです。
「究極のイチゴ」は今はまだ、常連さんに提供する程度ですが、いつかはメニューに加えたいです。



究極のイチゴ、なんかもう、マニアックな領域ですね…!
最後に渡瀬さんのように、夫婦での就農や新規就農者に向けたアドバイスがあればお願いします。



ありすふぁーむのSNSを見て来られる新規就農者の方には、シーズン中に休みがないなどの、現実もまずは話します。
その上で、「家族の理解は大事だよ!」と伝えています。
農業って失敗を全て自分で背負うので、サラリーマンよりメンタル崩すこと、多いですからね。
私の妻は農業に理解があって、農業に関しての喧嘩は1度しかしていません!



取材させていただき、ありがとうございました。




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