栽培や販売のDX化
自家醸造所で作る農園オリジナルのシードル
お客様目線でのWebサイト制作
長野県松川町のマルカメ果樹園代表の北沢毅(きたざわ つよし)さんに、
マルカメ果樹園の農業経営の改革について伺いました!
就農経緯:実家の観光果樹園を継ぐ
管理人北沢さんは実家が農家と言うことですが、子どもの頃の農業のイメージはどうでしたか?



うちは代々直販をメインにしている果樹農家でしたが、農業のイメージは良かったですよ。
お客様が笑顔でリンゴを買ってくれていましたし、両親は楽しそうに働いている様子を見ていましたから。
いずれ私も農業をしたいと思っていたので、27歳の時に証券会社を辞めて、2018年に実家の農業を継ぎました。



親元就農の方は「農家になんてなるものか!」という方も多いので、珍しいですね。
仕事としての農業はどうでしたか?



働く時間や栽培、販売を自由に決められる農業は、サラリーマンとは違ったやりがいはありましたね。
ただ同時に、
・データに基づいた栽培や販売の管理
・シードルの醸造
・新規のお客様へのアプローチ
などの課題には、取り組まないといけない状況でした。
私たちの状況とは関係なく、外部環境はどんどん変わっていきますからね。



外部環境の変化に対応するために、北沢さんが代表になって変革していったのですか?



いや、私が代表としてメディアに出ていますが、改革は私だけで取り組んだわけではありません。
お客様や気候変動に合わせて、家族一丸で泥臭く改善してきたんです。


栽培の改善:データに基づいて意思決定する果樹栽培



現在の栽培や労働力はどんな感じですか?



全部で3haほどで、リンゴ20種類、梨7種類を主に栽培しています。
祖母と両親、私と妻、弟に加えて、短期長期のパートスタッフ3名や、「おてつたび」というサービスを通じて来てくれる方々に手伝ってもらっています。
完熟ギリギリでの収穫を心がけているので、その日に来園いただいたお客様は喜んでもらえると思います。



直販がメインだから、完熟での収穫ができるのですね!
ところで栽培面では、データに基づいた栽培が課題ということでしたが、
どのような改善をされたのですか?



品種ごとの秀品率や収量をデータ化しました。
私が就農する前までは、勘や経験に頼って農業をしていても何とかなったんですが……、
気候変動も激しい現状では、勘や経験だけでは通用しなくなってきていますからね。



たしかに今までの栽培の常識では、天候不順に対応できない年もありますよね。
それで、栽培をデータ化した結果はどうでしたか?



栽培を数値化できるようになったことで、より具体的で建設的な栽培戦略を立てられるようになりましたね。
一番印象的だったのは、主力のリンゴの品種が、秀品率が低いことが明確になったことです。
・かけた手間やコストに対しての売上
・規格外品と正品の割合
などが数値化されたことで、どの品種に改植するべきかという、10年後の予測もついたのは大きな改善につながりました。



果樹は一度植えたら成木になるまで時間がかかりますから、データに基づいた意思決定が必要になってくるのですね。



おっしゃる通りです。
収量や秀品率に加えて、今後は自作のセンサーで、土壌水分量もログで測っていく予定です。
昨今の温暖化や猛暑は強烈ですから、潅水のタイミングをデータで判断できるようにしていきます。
販路の改善:観光農園とDX化



現在の販路はどんな感じですか?



現在は観光農園や直売所をメインに、少量ながら市場出荷もしています。
代々直販をしてきた農家ですし、私たちも直接お客様に買っていただいた方が楽しいですから。
果実だけではなく、「農園そのものをテーマパーク」としている所も、マルカメ果樹園の特徴ですね。



農園そのものをテーマパーク?具体的にはどういうことですか?



マルカメ果樹園は果物狩りだけではなく、BBQや車中泊も楽しめるコースをご用意しています。
リンゴ畑や山々の風景も、都会では味わえないほどの素晴らしい景色です!
農園は高速道路の松川インターからも近いので、遠方から来られる方も多いですよ。



果物を通した非日常の体験を提供している、ということですね。
自然の中でゆったりできるのは、都会の方にとっては楽しそうですね!



ちなみに販売面でも、DX化を進めました。
今までは電話やFAX経由の受注が殆どで、出荷のピークでも事務作業や電話対応に追われていたんです。
ここからWEB販売を伸ばした結果、紙でのやり取りが少なくなり、事務作業の時間も大幅に削減できました!
発送作業も分かりやすくなったので、家族のささいなケンカが減ったのも、DX化のおかげですね(笑)。



直販している農家にとっては、事務作業の手間が減ったのは大きなことですね!


六次産業化の改善:自家醸造所を構えてシードルの販売を開始



2019年からマルカメ果樹園さんは、自家醸造所を構えたそうですね。
なぜ新たにシードルを作ろうと思われたのですか?



元々両親の代から、OEM(外部委託)でシードルなどの加工商品は作っていました。
ただ、シードルの醸造所自体が少なく、納品できる日や量が限られているのが課題でした。
だったらいっそのこと、マルカメ果樹園で醸造しようということで。
クラウドファンディングも活用して、マルカメ果樹園で醸造所を構えることにしたんです。



なるほど、シードルの醸造所って少ないんですね。
それでも自家醸造は、設備投資や醸造免許取得などが必要ですよね?
大変なことも多かったのでは?



たしかにシードルに関しては、大変なことも多かったですね。
それでも弟の寛が責任者として、
・醸造所でのシードル作りの研修
・醸造免許の取得
などを問題をクリアして、マルカメ果樹園オリジナルのシードルが誕生したんです。



シードルは弟さんが担当されているのですね。
自家醸造のシードル、こだわりはどんな部分ですか?



やはり農家自ら栽培から加工まで、一貫してできていることです。
・マルカメ果樹園の目利きした完熟リンゴのみ使用
・完熟リンゴの香りや酸味、フレッシュな味わいを生かした果実感
など、美味しさには自信しかないです!
シードルは現在では、毎年完売する人気商品になりました!



生産した分を毎年完売!
それだけお客様から高い評価をされているシードルなのですね。


Webの改善:新規顧客が見やすいWebショップの立ち上げ



あとはなんといっても、私の妻が農園のWebショップを立ち上げてくれたことは大きかったです!
お客様も年を取りますから、今のお客様を大切にしながらも、新規のお客様に対するアプローチは必要不可欠でした。
だから「SUNABACO」というプログラミングスクールで学び、サイトを私たちで作ることにしたんです。



農家が自らWebサイトを制作。
私は詳しくありませんが、業者に依頼することもできたのでは?



旧サイトは自分たちでカスタマイズできない仕様でしたから、いっそお客様にとって見やすいサイトを自作しようと考えたんです。
・サイトの見やすさ
・商品ごとの紹介ページ
・細部のボタンの色や配置
・お客様が再注文しやすい施策
まで、お客様の視点で、妻が一つ一つ改善してくれています。



おしゃれで見やすいサイトですよね!
でも、Webショップの改善だけで、どのくらい変わるものなんですか?



Webショップから、新規のお客様の注文は年々増えていますよ!
私が就農した2018年では、Webショップ年間3万円しか売り上げがなかったのですが、
2025年度は1,000万円以上になりました。



マジですか!
お客様目線でのWebの改善、そんなに重要なのですね。
目標やアドバイス:末永く愛される農園であるために



マルカメ果樹園さんの、変化を恐れない姿勢はすごいですね。
失敗や変化を恐れないコツはありますか?



失敗への恐れというか。
気候変動にしても購買層にしても、外部環境は私たちの都合とか関係なくどんどん変化していますから、
「末永く愛される農園であるために、変わり続けるしかない」
という意識は、農園全体で常に共有していますよ。
だからこれからも家族一丸で、お客様目線での改善を続けていきます。



なるほど、ありがとうございます。
最後に北沢さんのように、これから就農を目指す若い方に、アドバイスがあればお願いします。



現在の日本の農業従事者の平均年齢は68歳以上で、人口が減り続ける以上に、農家数が減るスピードが速いです。
気力体力が絶対必要な農業では、若いというだけで価値があります。
若いうちの就農は勇気が必要ですし、大変なこともたくさんあると思いますが、
本当にやりたいのであれば、覚悟を持って、農業の世界に飛び込んでみてはどうでしょうか?



取材させていただき、ありがとうございました!

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