野菜茶業研究所→京都の問屋を経て、実家の農業を継ぐ
有機JASの茶栽培のこだわりと苦労
有機ほうじ茶だけで3種類ある秘密
愛知県新城市の鈴木製茶代表の鈴木克也(すずき かつや)さんに、就農した経緯や有機JAS栽培の茶栽培、お客様自身がひろめてくれるほどの有機ほうじ茶の秘密について伺いました!
経緯:外部での修行期間を経て、実家の茶農家を継ぐ
管理人鈴木さんはどのような幼少期を過ごされましたか?



自然や茶畑の中で遊ぶのが好きな少年でした。
農業に対してマイナスイメージもなくて、親がしている農業を継ぐことに、何の疑問もありませんでした。



農業が嫌ではなかったのですね。
高校卒業後に、そのまま親元就農されたのですか?



いえ、いきなり実家に戻るよりも、外でちゃんと茶の勉強をしてから就農したいと考えました。
だから地元の高校を卒業後は2年間、静岡県の野菜茶業研究所で茶の栽培や製造の勉強をしました。
そのあと3年間は京都宇治の茶問屋で、茶の流通やニーズのある茶の勉強をしてから、2012年に新城市に戻りました。



きっちり茶の栽培や流通を学んでから就農されたのですね。
就農された時の、周囲の反応はどうでしたか?



家族は概ね喜んでくれました。
ただ母親には心配されましたね。
茶の単価は年々落ちていて、経営も安定していなかったので、茶農家を継ぐことに不安があったのだと思います。



なるほど、課題がある中での就農だったのですね。
仕事としての農業をしてみて、どうでしたか?



「外部で学んできた流通や栽培を実践すれば、儲かるだろう!」
と思っていましたが…、
愛知県新城市は中山間地で、霜も降りる地域ですし、畑一枚が狭いんですよ。
他産地と同じような大規模栽培、市場や問屋のみに頼る販売では通用しないと分かり、簡単にはいかなかったです。



中山間地の農業は、平野部の農業とは別物なんですね。



だから親が作り上げた鈴木製茶の良さに加えて、独自の工夫で勝負していくしかないと思いましたね。
特に製造面と販売面は、私が就農してから変えたことで進化した所があります。


栽培:有機JAS認証取得の茶栽培のこだわりと苦労



鈴木さんの栽培はどんな感じですか?



5.5haの有機栽培の茶と、菌床シイタケと栗も栽培しています。
私が就農したタイミングで、周辺の茶畑が空いてきたので、栽培面積は増えました。
労働力は私と母がメインで、父とアルバイト1名、春の収穫期には短期で3名ほど働いてもらっています。



有機栽培の茶、珍しいですね!



父親の代から、輸出用の抹茶用に、有機JASを取得しているんですよ。
うちはほとんどの圃場で、農薬と肥料を使っていないのが特徴です。
虫も湧くし肥料を施さないので、煎茶としては春の一番茶しか収穫できません。
収穫後は翌年の樹勢回復のために、深く刈り捨てます。
しかしその分、紅茶やほうじ茶は香りがいいと評判です!



農薬だけではなく、肥料もやらないのですね!
しかし農薬不使用で無施肥だと、大変なことも多いのでは?



たしかに除草剤を使わないので、特に夏場は雑草の生育も早く、暑いので大変ですね。
私の場合は、刈払い機を使って、茶を超える高さの雑草を刈ります。
背の高いイネ科の雑草を刈っていき、クローバーなどの横に広がる雑草も増やす感じで管理しています。



肥料をやらないと、整枝の高さとタイミングが、翌年の収穫量がほぼ決まります。
経験値がモノを言う作業なので、一年の天候や収量をメモして数か月後の樹勢をイメージしています。
「例年より1㎝高く刈る」など、微妙な調整も求められるのが難しいですね。



なるほど、有機栽培ならではの工夫があるんですね。
参考になります。
今後の栽培面の課題はありますか?



祖父の代の「やぶきた」を、「ふうしゅん」や「さやまかおり」などの、煎茶や抹茶、紅茶にも合う品種に改植するのが課題です。
有機栽培だと収穫まで慣行よりも数年長く、7,8年かかるんですよ。
茶は50年に1回改植期を迎えるので、主力の茶園になるのは、私の孫の代ですね(笑)!


販路:直販と茶のバリエーションを増やす



現在の鈴木製茶さんの販路はどんな感じですか?



茶問屋を通した有機JAS抹茶の輸出が5割、あとの5割は鈴木製茶として飲食店や個人のお客様に直販しています。
シイタケはJA出荷がメイン、栗は全量飲食店に卸しています。



約5割は直販されているのですね。
鈴木さんが就農時に課題として挙げられていた、直販を増やすという改善の成果ですか?



そうですね。
100g1000円の小売価格でないと、有機栽培のうちでは採算が合いませんから。
あとはほうじ茶や紅茶、白茶、そして地元食材との6次産業化に取り組みました。
商品のバリエーションが増えれば、お客様の嗜好に合いやすくなりますからね。
ほうじ茶だけで3種類を開発



茶の中でも、特にほうじ茶は焙煎の機械を買って、こだわりを詰め込みました。
ほうじ茶は焙煎のやり方次第で、風味が大きく違ってきて、価値を生み出せると考えたからです。
試行錯誤の結果、今まで1種類だったほうじ茶は、スタンダード、二段焙煎、特選と、3種類展開しています。



ほうじ茶だけで3種類ですか!
…、そんなに味って違うものなんですか?



それがですね、3種類ちゃんと特徴が出ているんですよ!
「何が違うの?」
と聞いてくるお客様に対して、3種類のほうじ茶を試飲してもらうと、風味の違いを分かってもらえます!
3種類あれば試飲で飲み比べしたくなりますし、会話が弾みます。
嗜好は人それぞれですが、好みの味に近い商品が見つかります。



なるほど、3種類の試飲か…。
思わず飲みたくなって、買いたくなりますね…!


6次産業化で海外のコンクールで優勝も



鈴木さんは茶以外にも、地元食材とのコラボ商品なども開発されていますよね。
何か狙いがあるのですか?



そうですね、生姜茶や柑橘茶、イチゴ茶なども扱っています。
イチゴ農家や柑橘農家のお客様から、うちのほうじ茶に興味を持ってもらえます。
関係性や接点が多くなるのはメリットが多いですし、単純に私が地元の食材が好きというのもあります。



接点は多い方がいい、参考になる考え方ですね。



地元食材をブレンドしたフレーバー茶が好評でして、お客様に背中を押されて、海外のコンテストにも出品した所…、
イギリスでは優秀賞、パリでは金賞を受賞しました!
海外で取引が始まったり、新城市の方にも喜んでもらえましたね!
目標やアドバイス:いい茶をお客様に届け続ける



海外のコンクールで優勝するほどの茶!
地元を代表する農家になったのですね。



いやいや、地元を代表したいとは全く考えていません。
まあ就農当時は、「自分が新城の農地を守らねば…」と考えていましたが、現在は鈴木製茶の農業に集中しています。
いい茶をお客様に届け続けることで、地元に何かしらの貢献ができていればいいなと考えていますよ。



まずは自分の農業で結果を出すことを意識されているのですね。
最後に、農業に興味がある方にアドバイスがあればお願いします。



「なぜ農業がしたいのか。」
この問いにすぐに答えられるように、毎日自問自答してみてください。
農業を始める前と後では、理想と現実のギャップがかなりあって、離農していく方を私も見てきましたから。
上辺だけでなく芯の部分が強くなれば、厳しい状況でも農業が続けられると思います。


こぼれ話:お客様に紹介や販売までしてもらえるように



マルシェなどで試飲をしてもらうのは大事なんですけど、一番大事なのは栽培ですから、畑の管理が疎かになってはいけません。
だから私は現在、営業はしていません。
直販が増えていったのは、お客様が飲食店を紹介してくれて、広がっていった感じです。



お客様が勝手に広めてくれるものなんですね…!
しかしSNSでは、マルシェや百貨店などの販売会に、積極的に出られている印象がありますが…。



あ、うちの場合は、特に遠方での販売は、お客様にしてもらうこともあるんです。
私が栽培で忙しいのを見かねてか、お客様が試飲と販売をしてくれるようになったんですよ(笑)。



え、紹介だけじゃなくて、販売までお客様がしてくれるんですか!?



当然、手土産の茶や日当はお支払いしています。
私の代わりに販売してもらえることで、
・試飲や販売のオペレーション
・何を伝えてほしいか
・鈴木製茶の特徴やストーリー
など、改めて考えることができました。


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