結婚を機に全くの無縁だった農業界へ!広島県三原市のブドウ農家の女性の奮闘。

記事の内容

農業の大変さ、子育てとの両立に悩んだ経験

販売部門を試行錯誤しながら改善

今回インタビューした農家は、広島県三原市のブドウ農家の久和田早紀さんです。

結婚を機に、無縁だった農業の世界に来た久和田さんに、

就農当初の苦労や販売面の改善、これからの目標などを取材させていただきました!

目次

結婚を機に農家になるという決断

ナス男(筆者)

農家になるまでの流れを教えてください。

久和田さん

美術系の大学を卒業した後、一般企業の事務職で働いていました。
広島県の西側の方のサラリーマンの家庭で育ったので、農業とも三原市とも全く無縁の生活を送ってましたね。
2012年に結婚しましたが、子育てをしながら外に出て働くことも選択肢にはあったので、「農家の家に嫁いだ」という感覚はなかったです。

ナス男(筆者)

農家になる前の農業のイメージはどんな感じでしたか?

久和田さん

特にマイナスなイメージはなかったです。
「ブドウ農家じゃけん、ブドウは食べ放題じゃ、やったー!」
くらいに考えていました(笑)
近所の方も「よく農家になってくれたねえ!」と喜んでくれましたし(笑)

ナス男(筆者)

なるほど、いいイメージがあったのですね。(笑)
農業をやり始めた後、農業のイメージは変わりましたか?

久和田さん

子どもが生まれてから、私も2014年から旦那と一緒に農業をやり始めたんですけど、想像以上に大変なことが多いのにはびっくりしましたね。
慣れない外での仕事で体力がついていかずに、夏の暑さで熱中症になって動けなくなったことも当時は何度もありましたし、
子どもが体調を崩した時には看病をしに家に戻らないといけないので、ほとんど作業に参加できない日もありました。
「今日も全然仕事できなかった……」と悩むことが多かったですね。

ナス男(筆者)

農業に無縁の生活から、いっぺんに仕事が変わると、やっぱり戸惑うことも多いのですね。

畑に出て作業をする久和田早紀さん
久和田さん

子育てに農業にと、当初は毎日がてんやわんやでしたが、今ではだいぶ農家の生活に慣れて体力もつきましたね。
子どもも大きくなりましたし、私もパートさんに指示を出しながら管理作業をしています。

雇用や栽培について

ナス男(筆者)

現在の栽培面積と労働力を教えてください。

久和田さん

ブドウが15種類で90a、晩生種のナシが6種類で30a、白ネギが40aです
労働力は私と旦那、旦那のお義母さん、パートさんが10名ですね。
農福連携で、5名の方に依頼してきてもらうこともあります。

ナス男(筆者)

パートさん、多いですね!

久和田さん

そうですね。余裕を持ったシフトを組めるようにしています。
パートさんに関しては、私と同じように、主婦の方がほとんどです。
私自身が子育てと仕事のバランスに苦労した経験から、時間の融通が利いて、急な休みでも対応できるような職場の方が働きやすいですからね。

ナス男(筆者)

気兼ねなく休みが取れるというのは、主婦の方にとっては大事なポイントかもしれませんね!

久和田さん

本当に、家庭優先で働きに来てほしいと考えてますね。
あと、農福連携で来てくれる方には、主にパック詰めなどの細かい作業をしてもらっています。
集中力を切らさずに正確に重さを測って、きれいにブドウの粒をパックに入れてくれるので助かっています。
180gの粒パックのブドウは、手をかけられるうちだからできる商品で、好評をいただいています!

ナス男(筆者)

障がい者の方も、活躍できる場所がしっかりとあるのはいいですね。
あとは、栽培に関してこだわりはありますか?

久和田さん

肥料や農薬を極力控え、樹に適度なストレスを与えて、糖分をたくさん蓄える実になるような栽培が特徴です。
樹上完熟に近づけて収穫して、一番おいしい状態でお客様の元へ出荷することを心がけています。

ナシも主力作物の一つ
ナス男(筆者)

雇用や栽培に関して、今取り組んでいることはありますか?

久和田さん

旦那が栽培に関しては独自の感覚を持っている人で、細かいこだわりがあるんです。
その細かい感覚やこだわりを、私やパートさんでも理解できるように、栽培のマニュアル作りを進めていますね。

早紀さんの一日の仕事

ナス男(筆者)

今の久和田さんの仕事内容はどんな感じですか?

久和田さん

春から夏にかけては、旦那やパートさんと一緒に、ハサミを持って管理作業をしています。
8月末からブドウの収獲シーズンが始まってからは、私は販売面の仕事にほぼつきっきりですね。
HPやECサイトの注文メールや電話の対応をしたり、注文分の出荷調整をパートさんとしたり。
お店や直売所、宅配業者への出荷も私が担当しています。

ナス男(筆者)

販売面は早紀さんがメインで対応しているのですね!

久和田さん

農業を手伝い始める前から、出荷調整や販売に人手が足りていないのは明らかだったので、私が率先して改善してきました。
ブドウって衝撃で傷まないようにネットを入れて、ダンボールに詰めるまでの出荷調整に、すごく時間がかかるんです。
旦那は栽培に手を抜けない性格なので、草刈りや管理作業に一生懸命で、出荷調整や販売に時間を割けずに、二の次になっていたんですよ。
だからシーズンの最後の方には、取り遅れたものは捨てたり、農園に来てくれたお客様にタダでブドウをあげたりしていました。
さすがに商売としては、もったいないことですよね。

きれいに出荷調整されたブドウとパンフレット
ナス男(筆者)

それだけのロスがあるのは、外から見ていても見過ごせないですよね。
販売面を改善していく中で、失敗はありましたか?

久和田さん

登録したECサイトの数や商品の種類を増やしすぎて、出荷調整が複雑になってしまったことは失敗でしたね。
お店ごと注文ごとに重さを変えたり、ECサイトからの注文にはパンフレットを入れずに……など、出荷規格や同封する資料などの調整がこんがらがってしまって、発注ミスをしてしまったこともありました。

ナス男(筆者)

複雑になりすぎた地出荷調整の作業を、どのように改善していったのですか?

久和田さん

まずは、ECサイトや商品の数を絞って出荷調整を分かりやすくしました。
オペレーションが簡略になったことで、発注ミスもだいぶ減りましたね。
あとは、青果物の卸業者にもある程度の量を納品するようにしました。
卸業者は一定量のブドウやナシをまとめて引き受けてもらえるので、だいぶ出荷調整の負担が減り、ロスがほぼなくなりました。
ブドウの収獲以外にも、ナシや白ネギの作業が同時並行で入ってくるので、より栽培に労働力を割けるようになったのはプラスですね!
現在の販路の割合としては、白ネギはJA出荷ですが、ブドウとナシに関しては業者と直販が50%ずつですね。

ナス男(筆者)

収獲で忙しい時期も栽培管理にも人手を割けるなら、ブドウやナシの品質にもいい影響があるでしょうね!
あと、販売面で印象に残っていることはありますか?

久和田さん

やっぱり、シャインマスカットが売れ始める前の苦労ですね。
2006年から品種登録されたと同時くらい栽培を始めて、2011年から販売を始めたシャインマスカットですが、
久和田農園の知名度もまだまだ低いのも相まって、最初はあまり売れてなかったんです。
「皮ごと食べるのはやだ!」とか、「ピオーネの方が全然安いじゃん。」
とか、手に取ってすらもらえないこともありました。
だけど、シャインマスカットの可能性は栽培している私たちが何より感じていたので、うちの直売所以外にも他のお店にも粘り強く出向いて、店頭に並べてもらいました。
苦労した分、初めて直売所で私が接客してシャインマスカットが売れた時は、本当に嬉しかった!
その最初に買ってくださったご夫婦は、今でも買いに来てくださいます。
「元気にしとった?今年もシャインマスカットを買いに来たけぇ!」って。
苦労していた分が報われて、嬉しさも倍増した瞬間でした。

今や大人気のシャインマスカットは、久和田農園でも主力のブドウ
ナス男(筆者)

今や大人気のシャインマスカットにも、不遇の時代があったのかあ。
当初は販売に苦戦していたというシャインマスカットも、今ではもうブドウの代表格ですよね。

今後の目標や就農希望者に対してのメッセージ

ナス男(筆者)

今後の目標を教えてください。

久和田さん

まずは、メインのブドウの規模を拡大したいですね。
品種も今の15種類からもう少し増やして、いろんな種類が楽しめるブドウ園を目指したいです!
全国のブドウ農家さんたちと切磋琢磨しながら、ゆくゆくは法人化したいと考えています。

様々な種類のブドウを栽培している
ナス男(筆者)

私も久和田農園さんからブドウを買わせていただきましたが、色々な種類の味も食感も違うブドウが楽しめるというのは面白かったです!
最後に、就農希望者や結婚を機に農家になる方にメッセージがあればお願いします。

久和田さん

「農業って、本当にやりがいのある仕事ですよ!」ってことは言いたいですね
何をどれだけ栽培して、どこまで追求するかも自由な仕事って、多くはないと思うんです。
農繁期は休みが少なくなることもありますけど、パートナーと相談しながら、子育てとのバランスも取れると思います。
農業が向いている人には、ハマる職業なんじゃないかな。
私も2人の子育てとの両立をしながら、これからもマイペースに久和田農園を良くしていきたいと思っています。

食べれば笑顔になる、美味しい果物をお届けします!
ナス男(筆者)

取材させていただき、ありがとうございました!

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