農業法人の取締役&自らも農業法人を起業。若手農業者が手掛ける「作業委託メイン」の農業経営

記事の内容

農業大学→秋田県湯沢市で農業法人を設立

自社生産ではなく、作業委託がメイン

自社での米の販売も行う

秋田県湯沢市の(株)LUX代表の畑山千弥(はたやま ちひろ)さんに、就農した経緯や作業委託メインの農業法人、自社販売や農業体験などの取り組みについて取材しました!

目次

就農経緯:農業大学→秋田県湯沢市で農業法人を設立

管理人

畑山さんが農業に興味を持ったきっかけはなんでしたか?

畑山さん

高校を卒業してやりたいこともなかった私に、湯沢市の220haを耕作している農業法人〈やまだアグリサービス〉の社長の叔父が、
「うちでバイトしてみれば?」
と農業を勧めてくれて、肥料運びなどを手伝い始めたんですよ。

畑山さん

日々田んぼ道を走る中で、隣同士の同じ日に植えた田んぼでも、生育が全然違うことに気づきました。
「育て方や考え方で、生育が全然違ってくるのか!座学よりも農業は面白そうだ!」
と思い、現場主義の東京農業大学に進学しました。

管理人

東京農業大学では、どんな勉強をされていたのですか?

畑山さん

在学期間はちょうどコロナ渦だったので、大学に通った日は少なかったです(笑)。
とはいえアグリツーリズムや都市農村交流などに興味があったんで、何でも自分でやって確かめてみようということで、
首都圏内や秋田県で、収穫体験やマルシェで販売などの企画をしていました。

管理人

在学時から積極的に、自分で農業のイベントを行っていたのですね。
そして大学卒業してからは、どうされたのですか?

畑山さん

2024年に、やまだアグリサービスの取締役として入社しました。
叔父さんから「秋田に戻ってきてほしい。と言われていたんです。
「他の企業に就職してたら、農業の変革期に乗り遅れてしまう!」
と私も考えていましたから、私もタイミングが良かったんですね。

管理人

いきなり取締役!期待されていますね!
就農を決めた時の、周囲の反応はどうだったんですか?

畑山さん

「農業だけは絶対にやるなよ。」
サラリーマンの両親からは言われていたので、大反対されました(笑)。
兼業農家だった祖父母の苦労を見ていた両親は、私には農業をさせたくなかったのでしょうね。

管理人

首都圏で働いた方が将来設計がしやすいという、ご両親の気持ちも分かります。
就農に反対される方も少なくないですよね。

畑山さん

とはいえ私も、何事も自分でやって確かめないと気が済まない性格なので!
両親や周囲のイメージを超えるように、農業で結果を出さないとと思っていました。
そこでやまだアグリサービスの取締役と並行して、農業法人㈱LUXを設立しました。
縁あって若い世代が私の元に集まってくれたので、ニーズが伸びそうな作業委託をLUXでしていくことになったのです。

作業委託を請け負うメリットデメリット

管理人

起業も同時に!行動力がすごいですね!
でも作業委託の農業法人って、イメージがつかないんですけど…?

畑山さん

米や大豆の播種や収穫、夏場の草刈りまで、依頼があれば請け負って、委託料をいただいていますね。
地域でも農家の高齢化という課題がずっとありましたし、ピンポイントの作業委託もニーズは増えているんですよ。

管理人

委託料で売上を作るビジネスなんですね。
1から栽培や販売をしない作業委託の、経営上のメリットデメリットは何だと考えていますか?

畑山さん

自分たちで1から栽培しない経営上のメリットは、初心者でも参入できることです。
基本的には、労働力があれば依頼を受けることが出来ます。
作物の相場に関係なく、作業委託料を得られるということで、経営的にも計算は立てやすいですしね。

畑山さん

デメリットは、最初から相手側からの信用を得るのが難しいことです。
「長年自分たちで耕してきた田んぼを、他人に任せるのは抵抗がある!」
という方は多いですから。

管理人

たしかに新規就農でもそうですが、他所の若者は〈信用問題〉で農地確保が難しい面もありますよね。

畑山さん

おっしゃる通りですね。
ただ信用という点では、叔父のやまだアグリサービスが拠点としている湯沢市であれば、初年度から作業委託が請け負えそうという見込みはありました。

管理人

なるほど、親戚の農法法人が同じ地域にあるというのは、信用を得やすいですね。
あとは(株)LUX設立時の資金や農機はどうされたのですか?

畑山さん

青年等就農資金の融資を借りて、資本金としました。
とはいえ、農機にはお金はあまり使っていません。
・減価償却が終わったトラクター
・共同購入したコンバイン
・やまだアグリサービスのドローン
を使わせてもらうことで、最低限の機械設備投資で済みました。

管理人

自分の身一つで現地に向かって、仕事をするスタイルなんですね!
となると、資本金は何に使われたのですか?

畑山さん

ずばり、私の元に来てくれた、若手従業員の給与です。
人件費の先行投資になりましたが、いずれ地域や従業員に還元できると考え、農業未経験者でも雇用しました。
だからお金の不安というよりも、未経験者の若者だけで受託した作業がしっかりできるか、という不安はめちゃくちゃありました。

トラクターで作業する若手従業員

栽培:スマート農業の作業委託

管理人

それでは、現在のLUXさんの作型と経営規模を教えてください。

畑山さん

米30haと大豆30ha、色々な作業を、私を含めて4人で管理しています。
全て業務委託で、やまだアグリサービスから作業委託を請け負っていますよ。
平均年齢24歳と圧倒的に若いですから、時間的体力的に難しい作業でも請け負えるのが弊社の強みですね!

管理人

若い!体力は十分ですね。
米や大豆栽培のこだわりはありますか?

畑山さん

弊社はとにかく、省力化栽培をしています。
・乾田直播で30haの作業委託
・水管理を少なくする
・自動操舵やドローンなどのスマート機器を使用する

など、大面積を効率よくこなすことを心がけています。

管理人

スマート農業を活用して稲作をされているのですね!
ただ、委託する農家さんとしては、効率よりも収量を多く採ってほしいと思われるのでは?

畑山さん

おっしゃる通りなんですが……、
弊社で請け負っている田んぼの8割が中山間地なので、細かい管理は難しいことを委託者の方に事前に説明して、納得してもらっています。
委託者に納得してもらう所で、やっぱり苦労や失敗はたくさんありました。

管理人

例えば作業委託で、どんな失敗があったのですか?

畑山さん

田んぼの初期除草に失敗して、稲が見当たらないほど雑草だらけにしてしまったことがあります。
天候不順もあり、除草のタイミングを外してしまったのか、依頼者の農家にご迷惑をかけてしまいました。
他にも従業員が農地の境が分からず大豆を潰したりなど、初歩的なミスもありました。
「だから若者は…」と言われていたでしょうし、謝罪巡りをする日もありましたよ(笑)。

管理人

ただ作業をすればいいわけではなく、ちゃんと作物を育てるという責任もあるのですね。
そんな失敗から、どのように作業を改善していったのですか?

畑山さん

やまだアグリサービス取締役として、行政の資料や栽培計画も立てながら、㈱LUXの従業員との意見共有や栽培の勉強をしました。
地域の米農家の除草のタイミングを聞いたり、自分で農薬の特徴を調べたり。
米や大豆は年1作なので、基本的には失敗は取り戻せません。
だから同じ失敗を、2度と繰り返さないようにするしかありませんでした。

管理人

努力で失敗を挽回していったのですね。
今後の作業委託サービスの課題はありますか?

畑山さん

弊社以外にも、作業委託のニーズは各地域に増えています。
だから湯沢市以外でも、作業委託を展開できるだけの技術と体制を備えていくつもりです。

乾田直播の機械

販路:自社ブランドでの米販売や、農業体験も

管理人

(株)LUXさんは作業委託とは別に、自社ブランドの米を販売されていますよね?
なぜ自社でも販売しようと思われたのですか?

畑山さん

自社販売は、収入の柱というより、1人でも㈱LUXのファンになってもらうためです。
作業委託を請け負った田んぼで、弊社で販売できる分の米があるんですよ。
それを〈チヒロ米〉として、各種SNSから消費者に直接販売しています。
「どこの誰が栽培した米か」って、消費者に手に取ってもらうためには、すごく重要じゃないですか!
まだまだチヒロ米は数が限られていますが、ブランディングが相場に左右されない販売に繋がると考えています。

管理人

自社でも米が販売できるのはいいですね!

畑山さん

あとはLUXでは利益度外視で、収穫や都市農村交流などの農業体験もしています。
主語が大きいかもしれませんが、人って自分の経験や体験で物事を決めることが多いじゃないですか。
だから「農業に接点のない方へのきっかけ作り」として、農作業の大変さも収穫した喜びも、全部体験してもらいたいんです。

管理人

畑に来たことがないという方には、楽しい体験になるでしょうね。
直販や農業体験に関しては、今後の課題はありますか?

畑山さん

他の業態でもそうだと思いますが、直販も農業体験も、リピーターになってもらうことが難しいですね。
とはいえ、利益が出ないから止めるという選択肢はありません。
作業委託と同じく改善しながら、直販も農業体験もコツコツと続けていきたいと思っています。

LUXが主催した田植え体験

今後の目標:農業=モテる産業にしたい!

管理人

畑山さんの人生の目標はありますか?

畑山さん

5年10年先の目標は、考えても分からないんですが……。
ただLUXの作業委託事業をしていく中で、農業をモテる産業にしていきたいと思っています。
「農家になったら結婚できないぞ!」
などと、地方ほど農家にならない努力をさせられます。
断っておくと、私は農業従事者を無理に増やしたいとは考えていません。
だけど農業に触れてもいないのに、農家にならない努力をさせられる人がいるなら、それは損失ですからね。

管理人

参考になりました!
最後に、農業に興味がある方にアドバイスがあればお願いします。

畑山さん

まずは、悩んだり迷ったりする前に、動くこと!
農業体験なり、農家のバイトなり、少しでも実際の現場に出て感じてください。
そして就農したいと思ったら、迷わず就農するべきです!
就農するとなったら、悩みが山のように出てくるでしょうから、
そんな時は私に相談してください!

管理人

取材させていただき、ありがとうございました!

若い従業員もコンバインを乗りこなす
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