農業×八百屋業!?兵庫県神戸市で新規就農した女性農家が、面白い取り組みをしているらしい!

記事の内容

女性一人で独立して新規就農

地域の農家の野菜をまとめて出荷する八百屋業も!?

今回インタビューした農家は、兵庫県神戸市のおざき農園代表の尾崎七海さんです。

農業法人に転職し4年間研修をしてから、女性一人で新規就農した尾崎さんに、

就農までの経緯、女性新規就農者の苦労、宅配サービスの狙い、これからの目標について取材してきました!

目次

農業法人で正社員として働いてから新規就農

ナス男(筆者)

農業に興味をもったきっかけは何でしたか?

尾崎さん

元々植物全般に興味があって、日本大学生物資源科学部応用生物科学科で、植物生理学や生化学を専攻していました。
そこで野菜の成分分析のために利用したキャベツを、千切りにして食べたら、感動するほどおいしくて!
「何この甘いキャベツ!?やばない!?」
って感じで、一気に農家という職業に興味を惹かれました。

ナス男(筆者)

鮮度のいい冬のキャベツは甘いですからねえ!
ただまずは、大学卒業後は農業系の企業に就職されたと伺いました。

尾崎さん

将来的な新規就農も視野に入れていましたが、やはりまずは就農資金を稼ぐために働かなければならないと思い、新卒で農業関連のプラントメーカー入社しました。
仕事内容は、多岐にわたってましたね。
現場の農家さんの所に出向いて、土壌分析や作物の経過観察をしたり、野菜の成分を研究したり、事務仕事もしたり……
会社員の生活も充実はしていましたが、農家さんの所でお話をしながら作物の経過観察をして、新鮮な野菜をいただいたりしていたら、余計に農業がやりたくなるじゃないですか!(笑)
結果一年で辞めて、農業法人へ転職することにしました。

ナス男(筆者)

かなり予定を早めた就農に思えますが、農家を目指すと知った周りの方たちの反応や声はどうでしたか?

尾崎さん

私が農業に興味があることは両親は知っていたので、農家になると伝えた時も、「いいやん!」と軽い調子で言われました。(笑)
周りの農家は、「一緒に頑張ろう!」という方もいれば、「ホンマに大丈夫か…?」と心配してくださる方もいました。
ただ、否定や反対の意見がなかったのは、ありがたかったですね。

ナス男(筆者)

なるほど。
そして、本格的に独立就農を目指す道へ踏み出すわけですね!
農業法人に転職した後はどのように過ごされましたか?

尾崎さん

最初の2年間は、県が運営する農業の研修施設と並行してアルバイトとして働いて、後半の2年間は正社員として働きました。
私が転職した農業法人は、米麦大豆と野菜を栽培する土地利用型の農家で、私は米に加えて野菜部門の栽培管理も担当していました。
キャベツやホウレン草などの葉物野菜を、定植から収穫までの流れを全て経験できましたし、入社2日目からトラクターにも乗って作業させてもらったおかげで、独立した今でも作業で戸惑うことがあんまりないですね。

ナス男(筆者)

一年の流れを経験して、トラクターまで操縦していたのなら、独立しても一人で野菜を栽培できますね!
あと気になる資金面は、就農当初どんな感じでしたか?

尾崎さん

準備型を1年、経営開始型を3年間いただきました。
就農準備資金・経営開始資金:農林水産省 (maff.go.jp)
あとは自己資金で建てた作業用の倉庫に、水回りや電気の工事に300万円ほど、経営発展支援事業も活用しました。
経営発展支援事業:農林水産省 (maff.go.jp)
中古のトラクターや自走の草刈り機を買う時は、青年等就農資金で200万円ほど融資を受けて借りましたね。
青年等就農資金(新規就農者向けの無利子資金制度)について
農業を始める時は、本当にお金がいくらあっても困らないですね(笑)

新規就農時に買ったビニールハウス
ナス男(筆者)

農業って、必要な設備や機械を揃えるだけでも本当にお金がかかりますよね……

尾崎さん

農業法人に転職して独立就農を目指している時から、農政の方からは親身になって相談やアドバイスをもらっていて、すごくお世話になりました。
無事に新規就農した今でも、神戸市の新規就農の講演の依頼もいただきますし、本当に感謝していますね!

年間40品目の栽培

ナス男(筆者)

現在の栽培作物と規模、労働力を教えてください。

尾崎さん

耕作面積は、ハウスが0.5反と露地の農地が約6反ですね。
夏のミニトマトと冬の小カブを中心に、年間40品目の野菜を栽培しています。

主な労働力は今は私と父親ですが、不定期で就農当初に働いてくれていたスタッフ2人が来てくれることもあります。

主力作物のミニトマト
ナス男(筆者)

新規就農当初から、スタッフも雇われていたのですね。

尾崎さん

独立就農当初から、自分の想いに共感してくれて農園を一から作っていくスタッフを、多少無理をしてでも雇いたいと考えていたからです。
2名の当初雇用していたスタッフは、現在は定期的には来られなくなってしまいましたが、今でも不定期で忙しい時には手伝いに来てくれているので助かっています。
あとは、農業やおざき農園に興味を持ってくださった方々が月に3回くらい手伝いに来てくれているので、ありがたいですね。

ナス男(筆者)

なるほど。
では作物の栽培について、こだわりはありますか?

尾崎さん

周りの農家と作物の栽培時期をずらしたり、周りの農家が作っていないような作物を狙って作っていますね。
私は飲食店に直接野菜を卸しているんですけど、周りの農家が出せない時期や作物には需要があるのは分かるので、隙間を狙った栽培は意識しています。

おざき農園で栽培されている珍しい野菜
ナス男(筆者)

「ニッチな栽培戦略」というわけですね!
面白いです!
あとは、栽培に関して失敗したことはありますか?

尾崎さん

常に失敗していますね(笑)
種を蒔いてもうまく発芽しなかったことは何度もあります。
その時は蒔き直し、もしくはトラクターで畝ごと立て直して次の野菜の準備に切り替えますね。

ナス男(筆者)

発芽せずに蒔き直しは、農家あるあるですね(笑)
その失敗から、どのようなことを改善しましたか?

尾崎さん

時期をずらす栽培は、種を蒔いても発芽しないリスクが上がるのとトレードオフなので、承知の上でのことです。
それでも大変ですね。
気候も年々暑くなってきて作物が栽培しにくくなってますし、雨が降らない時期で憂鬱になると思いきや、ゲリラ豪雨にも泣かされます。
種を蒔く時期を工夫したり、耐暑性耐寒性のある品種に変えていくことも検討しないといけませんね。

水菜の収穫作業をする尾崎さん
ナス男(筆者)

気候変動にも、対応していかないといけない農業は難易度高いですよね……

都市近郊農業ならではの八百屋業

ナス男(筆者)

現在の販路はどんな感じですか?

尾崎さん

全体の30%が直売所、40%が飲食店残りの30%はマルシェや自分で企画したイベントで売っています。
神戸市の農業は、何といっても都市近郊農業!
車で5分ほど走れば、人の多い住宅街に出られます。
飲食店や直売所も多いですし、個人の農家がそれぞれ売り先を持っているイメージですね。

自らイベントを企画し、野菜を販売している
ナス男(筆者)

個人農家がそれぞれの販路を持っているとは!
都市近郊農業、面白いですね!
噂で耳にしたのですが、尾崎さんは周りの農家の野菜を集荷して飲食店に宅配していると聞きました。

尾崎さん

そうです!簡単に言えば、「農家寄りの八百屋」に近いことをしています。
個人農家がそれぞれ販路を持っているというのは、自由な反面、やっぱりすごく非効率なんですよ!
集荷して出荷するのは本来JAの役割なんですけど、こちらの地域のJAでは飲食店への個別配達などはまだ難しくて……
農家と飲食店の橋渡し役になるサービスは存在すべきだと常々感じていたので、それならば私がやろうかと!
週に2,3回ほど農家さんを回って集荷して、飲食店さんやホテルに卸しています。
現在は私と定期的に取引のある農家は10件、取引先も10件ほどになりました。

ナス男(筆者)

本業の農業に加えて、八百屋業もされていたとは!
大変なことだと思いますが、メリットはあるのですか?

尾崎さん

私は時期や作物を周りの農家とずらしているので、私の畑だけで飲食店さんが欲しい時期に欲しい野菜を全て提供できるわけではないんです。
だから、周りの農家から飲食店からの必要分を買い取って、飲食店に卸せるというメリットはありますね。
あと販路開拓に関しては女性目線が大事だと思っていて、
主婦の方がどの時期にどんな野菜を買うのか、私が女性だからこそ気持ちが分かるのはプラスだと思います。

ナス男(筆者)

なるほど、女性農家の尾崎さんだからこそできるサービスとも言えるわけですね。
「八百屋業もしている農家」という前例がほぼないことにチャレンジすることについて、周りの反応や声はどうでしたか?

尾崎さん

やっぱり、ネガティブな反応をもらうことの方が多かったですね。
宅配の仕組みだけ都合よく乗っかろうとする方もいましたし、飲食店に営業に行った時は、女性だからと取り合ってもらえなかったこともありました。
「野菜を右から左に流しやがって…」という陰口も聞こえてきますね。
そういう方は、もう無視です!
八百屋業は私が一人でやっていることなので、こちらの配慮や労力を理解して協力してくれる農家や飲食店を、こちらが選ぶようにはしています。

ナス男(筆者)

やっぱり前例のない試みは、色々言われてしまうのですね……
他に、八百屋業の大変なことはなんですか?

尾崎さん

「今週卸す予定の野菜の量が足りないかも!」という状況は度々あるので、農家さんと飲食店さんとの調整は大変ですね。
自然が相手の農業なので、作物の出来が悪かったり成長が遅れたりというのは仕方がないことですが、それでも謝って済むことではないので。
取引のある農家さんとは連絡もまめに取り合いますし、畑も自分の目で見に行くことを意識しています。
事前に飲食店に連絡を入れないといけない時は、当然早めに伝えるようにしています。

ナス男(筆者)

今後の販路に関しての目標はなんですか?

尾崎さん

もっと取引農家さんの数を増やしたいですね。
そうすれば、もっと多くの野菜が手に入りますし、より多くの飲食店と取引ができます。
あとは、八百屋部門でちゃんと利益を出せるような仕組みを作りたいです。
あくまで薄利多売の商売なので、今後は八百屋業の法人化も見据えて改善していきたいです。

女性らしい配慮も感じられる野菜の宅配

今後の目標や就農希望者に対してのメッセージ

ナス男(筆者)

今後の目標を聞かせてください。

尾崎さん

まあ、お金の面は、平均年収越えくらいで。(笑)
農業も八百屋業も発展させたいという気持ちはもちろんあるんですけど、
「誰かを蹴落としてでも、稼いでもっと有名になりたい!」とかはないです。
自分と関わる方が平和な気持ちになれるような、仕組み作りに時間を使っていきたいですね。

ナス男(筆者)

ありがとうございます。
最後に尾崎さんのような、女性で新規就農を目指す方へアドバイスがあればお願いします。

尾崎さん

うーん、なんだろう……。
農業を始める以上、「女性だから」と言い訳は通用しないですよ、ということでしょうか。
厳しい言い方かもしれませんが、やっぱり新規就農の相談を受けていると、何となく甘い考えで農業を見ている方も多いんです。
新規就農って結局、「起業」じゃないですか!
1人企業だとしても、社長になってしまえば男女関係ありません。
重い野菜を作らないとか乗用の農機を買うとか、石橋をたたき割るくらいの計画を立てて、それでも想定外のピンチは工夫や周りの方の協力で乗り切るしかないと思っています。

関わってくれる方が平和な気持ちになれるような農業の形へ
ナス男(筆者)

取材させていただき、ありがとうございました!

おまけ~(尾崎さんのポッドキャスト風)

ナス男(筆者)

尾崎さんは、ポッドキャストやYouTubeでも配信されていますね!
やっぱり、情報発信にも狙いがあるのですか?

尾崎さん

いや、情報発信は完全に趣味です!
美味しい野菜を取り寄せて食べるのが趣味なので、「食べるのうか」というポッドキャストを立ち上げました。
やつしろサニーサイドファームのあかねちゃんと、オタク全開のトークをする「平成女オタクのインドア同盟」も配信していますね。
あとYouTubeでは、恋愛ゲームの実況をしています。
前職の農業法人の方が見てくれていると知った時は、さすがに恥ずかしかったです……(笑)

ナス男(筆者)

なるほど、おざき農園さんをより深く知ることができるコンテンツなんですね!
興味がある方は、ぜひチェックしてみてください!

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