農林水産大臣賞を3代に渡って受賞したお茶を全国へ!豊橋のお茶農家の挑戦に迫る!

愛知県豊橋市に、3代に渡って農林水産大臣賞を受賞したお茶農家がいます。

それが、翠茗園の岡本広敏(38歳)さんです。

豊橋の若き茶農家に、就茗や販路の多角化、六次産業化などの決断を取材してきました!

農業に興味のある方は、ぜひご覧ください!

目次

お茶農家への親元就農の決断

ナス男(筆者)

現在の作物と栽培規模、労働力を教えてください。

岡本さん

お茶を約6ha栽培しています。労働力は両親と私と妻ですね。
主に私と父が茶園の栽培管理、母と妻が販売面を担当しています。

ナス男(筆者)

就農するまでは何をしていましたか?

岡本さん

農業高校を卒業してから、静岡の農研機構で2年間お茶の研究をした後に、20歳で親元就農しました。

ナス男(筆者)

農業をしようと思ったきっかけはなんでしたか?

岡本さん

茶畑に囲まれた実家で育ったので、祖父母や両親が茶畑で働いている風景は私にとっては日常でしたし、自然と私も後を継ぎたいと小さな頃から考えていました。
30年くらい前は茶の買取価格も良くて、「茶を頑張ってお金持ちになるぞ!」って考えてましたね(笑)
両親には、後を継げとは全く言われていませんでしたが、就農した時は喜んでくれたと思います。

ナス男(筆者)

就農してから、農業のイメージは変わりましたか?

岡本さん

農作業自体は、幼い時から見てたので変わりませんでした。
だけど私が就農した頃から、九州の茶の出荷量が増加と、茶の消費量が減少が顕著になってきて、茶の取引価格が下がり始めていたのがショックでしたね。
隣の茶で有名な静岡県でも、茶を辞めていく農家が出だしたので……
「このままではヤバい!」という危機感から、販売などの工夫により力を入れていますね。

3代に渡って農林水産大臣賞受賞!

栽培面の決断

ナス男(筆者)

3代に渡って農林水産大臣賞受賞するというのは全国でもほとんど例のない快挙だと思います!
お茶作りに、他の産地や農家との違いやこだわりはありますか?

岡本さん

ありがとうございます!
こだわりと言えば、栽培している茶の品種は多いですね。
他の農家が4種類くらいが普通ですが、うちでは10種類栽培しています。

ナス男(筆者)

え、そんなにたくさんの品種を作る狙いってなんですか?

岡本さん

収穫適期の分散、それだけです。
栄養が多くある、美味しい茶葉が収穫できる期間は、約5日なんです。
一番おいしい茶葉の収穫タイミングを逃さないために、早生中生晩生の品種をより細かく組み合わせて栽培しています。
品種の違いで栽培管理も微妙に違ってくるので、大変ではありますが、
納得いくお茶を作るためには大切なことだと考えています。

収穫適期は茶葉を触った感触で分かるらしい…!
ナス男(筆者)

収穫適期は5日!短いですね。
栽培面で失敗したことはありますか?

岡本さん

3番茶まで収穫して売上を立てようとして、更新剪定が遅れてしまったことですかね。
うちでは10月に枝を短く刈り込んで、翌シーズンに備えるのですが、
収穫作業がずれ込んで更新剪定が遅れてしまうと、翌シーズンの新芽の分枝が少なくて、大きさが揃わなくなってしまうんです。
新芽が揃わないと、生長にばらつきが出て味がブレてしまいます。

ナス男(筆者)

一つの作業の遅れが、翌シーズンまで響いてしまうのですね。
その失敗からどうやって栽培を立て直したのですか?

岡本さん

まずは3番茶の収穫を止めました。
売上は上がるのですが、翌シーズンの新芽まで響くのはつらい。
いい新芽を翌シーズン春に揃えるためには、その前年から考えて整枝しないといけません。
枝を伸ばしっぱなしにせずに、適度に徒長枝を刈り捨てるようにしました。
3番茶の収穫を止めた分、当然売上は落ちたのですが、一番茶の出来を左右する新芽の品質や揃いは良くなりましたね。

ナス男(筆者)

一番茶の品質を高めるために、それだけの決断があったのですね。

収穫機と更新剪定機

販路の多角化の決断

ナス男(筆者)

岡本さんが就農されてから、販路をより多角化していったと伺いました。
現在の販路はどんな感じですか?

岡本さん

今は卸問屋が7割、直販が3割ですかね。
直販は、主に直売所やECサイトなどです。

ナス男(筆者)

販路を多角化していく中で、失敗したことはありますか?

岡本さん

「大口の取引先と契約すれば、価格が安定するだろう。」と意気込んで、東京の飲食店や旅館に売り込みに積極的に行っていた時期もありましたが……
売り込みのための出張が多くなり、次第に茶園の栽培管理がおろそかになってしまったのが失敗でしたね。
まずは納得のできるお茶が作れないとダメだと、気づかされました。

岡本さん

そして、交渉の場で決まって言われたことは、「品質はいいんだけど、もっと安くならないの?」です。
契約出荷できる大口の販路は魅力的ではあったのですが、安すぎる単価ではこだわった茶栽培が成り立ちません。
交渉がうまくいかなかったことで、逆に決意が固くなりました。
自分が納得できる品質のお茶を、適正価格で買ってもらえる所にしか売らない、とね。

ナス男(筆者)

失敗の中から進むべき道を発見したわけですね。

岡本さん

そのとおりですね。
この経験から、イベントなどの対面販売もなるべく出店するようになりました。
うちのお茶の良さやこだわりを知ってもらいたい、という想いからです。

直接お客様と話すことで、お客様の嗜好の変化や、売れるパッケージの工夫などの気づきも多く、お茶製造の参考になっています。

ナス男(筆者)

お客様から学ぶかあ。アンテナの張り方がすごいですね。

お客様のニーズ合わせ、日々の気温や揉捻ぐあいで機械を調整する

六次産業化の決断

岡本さん

あとは外部製造委託(OEM)で粉末加工したお茶を開発して、販売するようになりました。
今の家庭って、お茶を沸かす急須がないじゃないですか。
だから手軽にお茶を楽しんでいただけるように、粉末加工のお茶を製造して販売しています。

ナス男(筆者)

たしかに急須がない家庭も多いですから、粉末なら便利そうです!
ちなみに、六次産業化の失敗はありますか?

岡本さん

もうたくさん失敗してますね(笑)
お茶の粉末を使ったコラボ商品も販売しましたが、売れ残って在庫を抱えることもありました。
在庫になるならまだマシで、賞味期限が短いスイーツなどは、売れ残ったらその分マイナスです。
当然まずは小ロットで試しに生産するんですけど、やはり販売先までの計画をしっかり計画しておかないといけないということは痛感しました。

ナス男(筆者)

それはつらい……
売れ残った失敗から、変えたことはありますか?

岡本さん

いや、売れ残ったから六次産業化は止めようとはならなかったですね。
むしろ、小さな失敗はこれからもしていこうと思いました。
販売先ができて定期的な製造の目処がつくくらいの定番商品を、これからも模索し続けたいです。
商品とともに「岡本さんのお茶を使っているんだ!」というPRになれば、主力商品のお茶の購買にもつながりますからね。

おしゃれなパッケージの粉末茶

今後の目標や就農希望者に対してのメッセージ

ナス男(筆者)

今後の目標を教えてください。

岡本さん

まずは自分の納得できる品質のお茶を栽培して、今のお客様にこれからも喜んでもらうことですね。
あとは、「全国のお茶農家の違いを知ってほしい、お茶をもっと好きになってほしい!」ということですかね。
お茶自体の裾野を広げたいという野望も、短期目標の先にあります。

ナス男(筆者)

ありがとうございます。
最後に、就農希望者にメッセージをお願いします。

岡本さん

お客様や販売先まで確保した上で、栽培を始めることですね。
作れば作っただけ売れる時代がありましたが、令和はそうではありませんからね。
言わずもがな、品質のいい作物を作るのが前提ですが。

ナス男(筆者)

就農希望者の中には、未知の不安になかなか行動を起こせない方もいると思います。
失敗することに対して、岡本さんはどのように考えていますか?

岡本さん

「失敗は若いうちにたくさんしとけ!」ってことですね。
私もいっぱい失敗してきました。
失敗したら心が痛いしお金も減りますが、失敗からしか学べないことがたくさんあります。
だから、農業でやりたいことがあるならば、失敗は恐れてはダメです。

農林水産大臣賞受賞のお茶を全国へ!
ナス男(筆者)

取材させていただき、ありがとうございました。

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