結婚を機に農業の世界へ。経営移譲して取り組む、ソムリエ大賞金賞のメロンの販路拡大

記事の内容

学生結婚の後に農業へ

日本ソムリエ大賞金賞のメロン栽培

経営継承して取り組んだ販路開拓

今回インタビューした農家は、愛知県田原市の水野農園の水野博子(みずの ひろこ)さんです。

結婚して旦那さんの実家の家業である農家に入った水野さんに、

就農までの経緯や栽培のこだわり、販路開拓などを取材させていただきました!

目次

学生結婚ののちに農業の世界へ

ナス男(筆者)

水野さんは農家になる前は、どのような仕事をされていたのですか?

水野さん

動物看護士を目指していて、動物医療の専門学校に進学しました。
だけど、一緒の専門学校に通っていた旦那と、20歳の時に結婚をして。
その後3人の子どもにも恵まれたので、子育てをしながら、旦那の実家の農業を夫婦で手伝うようになりました。

ナス男(筆者)

学生結婚だったのですね!
農業に対するイメージはどうでしたか?

水野さん

同じ地域の「あつとま君」と一緒で、
愛知県田原市は全国でも有数の農業王国でしたし、周りは農家ばっかりだったので、特に農業は嫌だという気持ちはなかったですね。
ただ周りからは、
「水野農園みたいな、規模が大きくて熱心に働く農家に嫁いだのは大変だね~!」
と言われました。(笑)

ナス男(筆者)

あつとまさんも、同級生がほとんど農家だったと言ってましたね。
農業が有名な田原市の中でも、水野農園さんは一目置かれるほどの農家だったのですね!
でもお子さんが小さい頃は、子育て優先で働いていたのですよね?

水野さん

そうですね。
・子どもを保育所に送ってから、
・9時~11時  農作業

・昼ごはんの支度
・13時~15時半  農作業
・子どもを保育所に迎えに行って、晩御飯の支度など

みたいな生活でしたね。
義両親も旦那も子育てに理解があり、子どもの用事での休みもあったので、助かりました。
現在は子どもたちも大きくなったので、私もフルタイムで農業をしています。

水野家の長男が生まれた時の一枚
ナス男(筆者)

農業が仕事になるということに、不安はありましたか?

水野さん

「とにかく子どもたちの養育費をなんとかしなければ!」
というお金の不安は、正直ありましたよ。

でも職歴も資格もない20代の主婦が働ける仕事って、なかなかないじゃないですか。
それに義両親からも、
「忙しいから手伝って!」
とお願いされてましたし、求められているのなら農業で稼ぐしかないと、私たち夫婦も必死でした。

ナス男(筆者)

子どものために農業で稼ぐ、理由なんて個々で違って当たり前ですよね。

水野さん

あ、でも今は農業自体が好きですよ!
2020年に義両親と話し合って私たち夫婦に経営移譲をしてからは、自由度が高い農業の面白さを改めて実感しています。
それに最近、私は重度の動物アレルギーということが分かって!
私が動物看護の道を選ばなかったのは、正解だったと思ってます(笑)!

日本ソムリエ大賞金賞を受賞したメロンの栽培

ナス男(筆者)

現在の作型や労働力を教えてください。

水野さん

キャベツ5.5haと、露地メロンが1haです。
それを義理の両親と私たち夫婦、義理の祖母の5人でやってます。

キャベツの収獲、箱詰めする裕昭さん
ナス男(筆者)

やはり愛知県田原市と言えば、冬のキャベツですね!
作物を変えようと思ったことはありますか?

水野さん

キャベツやメロンに使用する農業機械や義両親の長年のノウハウがあったので、作物を変えたいと思うことはありませんでした。
まずはキャベツとメロンの栽培ノウハウを覚えて、その上で磨きをかけようと考えていました。

ナス男(筆者)

地域の有名なキャベツやメロンが作れる農業機械が揃っていれば、作物転換する必要はなさそうですね。
栽培のこだわりはありますか?

水野さん

こだわりかあ…。
しいて挙げるなら、基本に忠実な栽培をしているということですかね
有機質肥料、土づくり、栽培管理、農薬。
特別に変わったことはしていません。
だけど、常に栽培の勉強や試行錯誤はしています!
旦那は土壌医2級を取得して、根っこを強く育てる土づくりの技術を、アップデートしていますよ!

ナス男(筆者)

当たり前のことを深めていく栽培が、水野農園さんのメロンが日本ソムリエ大賞も金賞受賞につながったのですね!

水野さん

ありがとうございます!
日本ソムリエ大賞に関しては、栽培技術の腕試しだと思って参加したんです。
地域の方々からは、
「水野農園のメロンはおいしい!」
と言ってもらえるんですけど、私たちの栽培技術がどこまで客観的に評価されるのかを知りたくて。

もちろんエントリーするからには、いい賞を取りたいとは思っていましたけど、金賞がいただけるとは想定外でしたね。

ナス男(筆者)

第三者も認めるほどの、メロンの美味しさと栽培技術ということですね!
ちなみに、メロン栽培で失敗したことはありますか?

日本ソムリエ大賞金賞を受賞したロピアメロン
水野さん

失敗は、毎年ありすぎるくらいあります(笑)!
でも印象に残ってる失敗で言えば、野菜がおいしくなると謳われた有機質液肥をメロンに使いすぎたことですかね。
「入れれば入れるほど美味しくなるんだろう」と消毒と一緒に散布していたんですけど……
その結果、窒素過多になってしまい、アブラムシとコナジラミが大量発生しちゃって。
2000玉以上のメロンを腐敗させてしまいました。

ナス男(筆者)

2000玉!?かなりの損害ですね……。
でも、有機質液肥はメロンに良さそうな気がするんですが…?

水野さん

メロンは肥料成分(チッソ)が過剰になると、品質が極端に悪くなるんです。
有機質肥料の匂いにも釣られて、弱った株に虫が湧いたんだと反省しました。
良いと謳われている肥料でも、微量の葉面散布でも、基本の肥料設計が崩れれば元も子もないと痛感しましたね。
お客様や地域の栽培技術の常識を超えようと、試験した結果が裏目に出てしまいましたけど、
旦那も私も、後悔はしてませんよ!
失敗しないと、メロンは美味しくならないと思っているので!

ナス男(筆者)

失敗を糧に、さらに栽培技術を深めたのですね。
あとは栽培に関して、取り組んでいる課題はありますか?

水野さん

やっぱり温暖化や豪雨などの対策ですね。
年々猛暑がきつくなってますし、台風の時に浸水して、2反以上もメロンがダメになってしまった苦い経験もあります。
具体的な対策としては、
①メロンを栽培するための、浸水しない畑の選定
②メロンの品種や定植時期、耐暑性の台木を使う
など、栽培の基本は今まで通り守りつつも、気候変動に対応していきたいです。

経営移譲して始めたメロンの販路開拓

ナス男(筆者)

現在の販路はどんな感じですか?

水野さん

キャベツは99%市場出荷です。
メロンは市場が8割、直売所やネット販売が2割くらいですかね。
私たちに経営移譲してから直販を増やし始めたので、今後はメロンの直販を増やしていきたいと思っています。

メロンの管理をする博子さん
ナス男(筆者)

経営移譲、なかなか大変な決断だったと思いますが、どういった経緯があったのですか?

水野さん

以前はほとんどを市場に出荷していたんですけど、2018年2019年と、キャベツの価格が大暴落して……
「市場価格に全て依存していてはまずい!」と農業経営の危機を感じて、私たち夫婦が義両親に直談判したんです。
私たちの熱意を汲んで、義両親も経営を譲ってくれて。
長年続けてきた農業経営を譲るのは勇気も要ったと思いますし、今でも義両親とは仲良く農作業をしているので、感謝しています。

ナス男(筆者)

そうだったのですね。
水野さん夫婦が、直販で変えていったことはなんですか?

水野さん

経営移譲してから、まずはポケマルや食べチョクと言った代表的な産直ECサイトに登録しました。
そこからふるさと納税や、色々なECサイトからのメロン販売のお話をいただくことになったので、水野農園の情報をまとめるためにHPを作りました。

ナス男(筆者)

なるほど、おいしいメロンは引く手数多ということですね。
販路を広げていく中で、苦労はありましたか?

水野さん

他の農家さんも言われると思うんですけど、やっぱりお客様や業者の方とのやり取りが大変です…。(笑)
私たちは特に、今まで栽培にしか力を入れてこなかったので、メールのコミュニケーションはまだ慣れてなくて。
メロンの直販を増やす中で、逆に全量買い取りの市場出荷のありがたさを再確認しています。

ナス男(筆者)

コミュニケーションコストと言われる負担は、慣れていないと大変そうですね。
あとは水野農園さんの、直販に関しての目標はありますか?

水野さん

愛知県稲沢市のお店からメロンやキャベツの販売のお話をいただいたので、そこに注力したいと思っています。
水野農園の場所は、渥美半島のさらに先端の方なので、輸送するのに不利な土地で。
だから名古屋方面の稲沢市への販路のお話は、「渥美半島から外に売り出す」チャンスだと思っています。

今後の目標や就農希望者に対してのメッセージ

ナス男(筆者)

参考にしている農家さんや理想像はいますか?

水野さん

考え方を参考にすることはありますが、他の農園と比べたりマネしようとは思っていません。
メロンの味も売上も、過去の私たちを超えることを常に目指しています!

ナス男(筆者)

かっこいいですね!
最後に水野さんのように、就農希望者や結婚を機に農家になる方にメッセージがあればお願いします。

水野さん

農作業は地味で大変なことがほとんどですから、農業の楽しさは自分で工夫して作っていくことが大事です。
私たちは経営移譲をしましたが、自分たちで責任を取ることも農業を楽しむための選択肢の一つだと思います。
自分たちの采配で農業をした方が、絶対に楽しいと思いますから!

定植機でキャベツを受ける博子さん
ナス男(筆者)

取材させていただき、ありがとうございました!

画像提供、農家さんのリンク
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