年間5000人越えの収穫体験を受け入れる大人気農園!元教員の農家が子どもたちに教えたい、「農業の面白さ」

記事の内容

年間5000人を超える小学生の収穫体験

「農業って面白い!」を教え続けたい

今回インタビューした農家は、神奈川県横須賀市の「ブロ雅農園」の鈴木雅智さんです。

SNSでも人気のブロ雅農園さんに、就農までの経緯や収穫体験、農業への想いなどを取材してきました!

目次

教員を辞めて、実家の農業を継ぐ

ナス男(筆者)

ブロ雅さんが農業をする前は、何をされていましたか?

ブロ雅さん

実家が農家で、将来は私も農家を継ぐと漠然と考えていたので、農業高校に進学しました。
農業高校3年進路の時にお世話になった先生に憧れて、「先生をやりながら農業を手伝うという関わり方もいいかも…!」と思い立ち、教員免許を取るために東京農大に進学しました。

若かりし頃のブロ雅青年
ナス男(筆者)

公務員と農家の両立を目指したわけですね!
大学卒業後は、母校の農業高校に戻って教員をされていたと伺いましたが。

ブロ雅さん

大学を卒業する時に、「教員募集枠が空いているから、やってみないか?」母校の農業高校に誘っていただいたんです。
実家から近くて農家との掛け持ちもできる点にも惹かれ、臨時教員として11年間働きました。
主に、花きの授業を担当していましたね。

ナス男(筆者)

農業との両立をしながら11年続けられた臨時教員を辞めて、実家の農家に入るきっかけはあったのですか?

ブロ雅さん

分校もあった農業高校が合併して、数年後に総合高校になることが決定したことがきっかけでした。
学校の合併は時代の潮流でもありますが、私としても教員を辞めて実家に入るタイミングだと思い、2016年に親元就農しました。

ナス男(筆者)

臨時教員を辞めて農家になると決めた時の、家族の反応はどうでしたか?

ブロ雅さん

教員を辞めない方がいい、という雰囲気は感じていましたね。
「今まで教員と農業の手伝いは両立してできていたのに、安定した職業を手放すのはもったいない。」と。
嫁さんには直接言われないまでも、やっぱり収入面に不安はあったようですし。

ナス男(筆者)

まあでも、家族の反対はあり得る反応ですよね。
就農前の農業のイメージや、周囲の声はどうでしたか?

ブロ雅さん

私はずっと父や祖父の生き生きと働く背中を見てきたので、「農業って面白い!」という希望を持って農業高校に進んだのですが……
「農業はやりたくない、実家が農家だから仕方なく来ている。」というモチベーションの同級生が多いのはショックでしたね。
農業に否定的な意見も多かったのが、逆に発奮材料になったのかもしれません。

教員時代のブロ雅先生
ナス男(筆者)

農家になりたくないという意見が、逆にモチベーションになったわけですね。
実際にブロ雅さんが就農して、農業のイメージは変わりましたか?

ブロ雅さん

農業を教える立場ではありましたが、実際に自分で農業をするのとは勝手が全く違いましたね。
ネット販売や直売所で売りたいと当初から思ってはいたのですが、現実は栽培管理に手一杯で、理想とは程遠かったです。
一生懸命栽培管理をしてコツコツやっていても、台風一発で全滅するリスクもありますし……
ハイリスクローリターンで、何をやるにも金がかかるんだと痛感しました。

年間100種類以上の多品目栽培

ナス男(筆者)

現在の栽培作物と規模を教えてください。

ブロ雅さん

耕作面積は2.5haで、冬のブロッコリーの作付が約1.5haと一番多いですかね。
あとは、少量多品目で100種類以上の野菜を栽培しています。

色とりどりの野菜を100種類栽培している
ナス男(筆者)

やはり、ブロ雅さんの由来にもなったブロッコリーがメインなんですね。
この耕作面積をどのくらいの労働力で回していますか?

ブロ雅さん

私と妻と父親、アルバイトの方を1名雇っています。
あとは農福連携で、週に3回ほど依頼して1チーム4人きてもらっています。

ナス男(筆者)

農福連携!
最近よく取り入れている農家さんを聞きますが、ブロ雅農園さんはけっこうな頻度で依頼されているのですね!

ブロ雅さん

私の地元では、私が一番先に農福連携を取り入れました。
教員時代にも何かしらの課題がある生徒に、自分の畑の区画を計画して栽培するという授業をしていた経験がありまして。
そのような生徒たちは、分からないことは何度も確認してくれますし、害虫や雑草もまめに取っていて、誰よりもきれいな畑の区画だったのを見ていたのが決め手です。
障がいがあるから作業は難しい、ではなく、農家が伝え方次第で働けるようになりますよ。
私の畑での活躍ぶりを見て、半信半疑だった周りの農家も、どんどん農福連携を取り入れだしました(笑)
今では、私が地域の農福連携の農家側のアドバイザー的な役割をしていて、講演もしています。

ナス男(筆者)

誰でも活躍できる伝え方や、作業の仕組みを作ることが大事なんですね。
栽培に関して、失敗したことはありますか?

ブロ雅さん

就農当初で言えば、ニンニクを植え過ぎたことですかね。
ニンニクの種を20~30㎏がこの地域の標準の所を、100㎏植えちゃって……
収穫バサミでニンニクの葉を切りすぎて、手首が腱鞘炎になりました。(笑)
嫁さんと夜中まで、半泣きで出荷調整したのは、今では笑い話です。

ナス男(筆者)

ハサミを使いすぎて腱鞘炎は、農家あるあるですね(笑)

ブロ雅さん

今年でも、ポップコーン用のトウモロコシで大失敗しました。
ポップコーンは害虫に強いと言われてますし、作業の都合も重なって農薬をほぼ使わずに放置していたら……
アワノメイガが実の中に入りまくって、ほとんど処分になってしまいました。

ナス男(筆者)

農薬使わな過ぎて害虫だらけになるのも、典型的な農家あるあるですね(笑)

年間5000人以上が来園する、大人気の収穫体験

ナス男(筆者)

販路はどんな感じですか?

ブロ雅さん

ブロッコリーは、スーパーに9割くらい、個人のレストランに1割くらいですね。
少量多品目の畑は、ほとんど収穫体験用です。

ナス男(筆者)

ブロ雅農園と言えば、収穫体験!
5000人以上が来園する収穫体験を、始めたきっかけはなんでしたか?

ブロ雅さん

農業高校の教員時代にも近くの臨海学校の授業の一環として、収穫体験ができないかという問い合わせを、受けきれないほどいただいていたんです。
私の畑の目の前にはソレイユの丘という公園があり、私自身がソレイユの丘内の農業体験アドバイザーをしている関係で、トイレも大型バスの駐車場もそちらを借りられるという、
収穫体験には絶好の条件というのも相まって。
農家になってから、私の畑で実践に移したというのがきっかけです。
学校の先生の評判や口コミで徐々に広まって、通常の学校の授業でも来てもらえるようになっていった感じですね。

子ども達が収穫体験をしている様子
ナス男(筆者)

近くに大きな公園があるのは有利ですね!
でも収穫体験にお金が発生するというのは、周りから色々言われませんでしたか?

ブロ雅さん

たしかに、農家がボランティアみたいな形で子ども達に収穫体験を用意することはあるので、
「収穫体験なんかでお金を取るなんて!」と言われることも未だにありますよ。
しかし他の農業体験でもそうですが、都会に住む子ども達やその家族には、お金を払ってでも畑に出て野菜に触れたいという需要があると思うんです。
今は生徒一人につき1650円いただいて、夫婦二人で1時間で100人以上を先導します。

ナス男(筆者)

一人1650円!?
5000人×1650円=……すごい!
単価は高いし、収獲の手間も省けますし、一石二鳥どころじゃないですね!
農業経営に関しての、収穫体験のメリットはありますか?

ブロ雅さん

農薬をなるべく控えて栽培しているので、どうしても変な形の野菜は多くなるのですが……
そんな規格外の野菜も、生徒達には「レア野菜だ!」と、むしろ面白がってもらってくれます。
でも何より、普通に収穫して出荷するよりも、私がやりがいがあるというのが一番の理由ですね!
私たちが育てた野菜で、来てもらった生徒達が喜んでくれる顔を見れるのは、農家冥利に尽きるというものです。

バズりまっくた規格外野菜「ヤバいニンジン」
ナス男(筆者)

教員の性分なんでしょうね!
収穫体験ならではの、生徒たちに笑顔で帰ってもらうための工夫はありますか?

ブロ雅さん

例えば、カラフルな数種類の大根やニンジンは、あえて品種をごちゃまぜにして蒔きます。
栽培は面倒になりますが、「大根ガチャ」にすることで、生徒達は面白がってくれます。
大切なのは、いかに生徒達や引率の先生に満足してもらえるか。
子どものブームを自分でも体験しようと、人気のカードゲームを買ってプレイしたり、子ども向けの雑誌を読んだりするのは習慣になりましたね。
おかげで横で見ている嫁さんには、「いつも遊んでばっかりだね。」と呆れられてますけどね(笑)

ナス男(筆者)

生徒たちに楽しんでもらうために、血のにじむ努力をされているのですね……。
でも例えば雨や台風被害があった時、収穫できる野菜が少なくなっちゃう場合はどう対応するのですか?

ブロ雅さん

私も最初は、「野菜をたくさん採ってもらわないと割に合わなくなる!」と不安や焦りもありました。
でも、収穫体験をやっていくうちに、気づいたんです。
生徒達の満足度は、野菜の量に比例しないと。
大量の野菜を収穫できたとしても、学校に戻る時に重くて荷物になるから大変じゃないですか。
雨が続いたり台風で被害が出た時には、近くのキャンプ場にある体育館や研修室に移動して授業をします。
・野菜の話をしたり
・ジャガイモなどの袋詰め体験をしたり
・バターナッツなどにシールを貼ったり
パックシーラーで袋を留めるだけでも、野菜に目とか口のシールを貼って変な顔を作るだけでも、生徒達は十分楽しめると考えています。

シールを貼るだけでも楽しめる工夫
ナス男(筆者)

なるほど、収穫体験はメリットばかりに聞こえますね!
でも実は、大変なことも多いんじゃないですか?

ブロ雅さん

農業自体が初めての生徒達が相手なので、ある程度はミスをして損害が出るのも許容しないといけません。
・ナスを収穫バサミで切るように教えても、株ごと引っこ抜いてしまったり
・小さなニンジンを採ってしまったからと、埋めて戻しちゃったり
・大人数が畑に入るので、畝は踏まれ放題になったり
生徒達だけではなく、引率の先生も間違えてるんですから。(笑)
まあ、それも含めて食育ですよ。
何もかもが初体験なんだから、小さなミスにいちいち怒っていたら、生徒達も先生も面白くないでしょう?

ナス男(筆者)

やはり楽しんでもらうことには、ある部分での我慢も必要なのですね。
収穫体験に関して、今後の目標はありますか?

ブロ雅さん

ソレイユの丘の駐車場とトイレを借りて成り立っているので、私の農園だけで完結できるような設備も考えないといけない課題だと思っています。
あと実はこの地域でも、いくつかの企業さんが収穫体験を始めました。
需要が多い収穫体験ですが、ベテラン農家でも簡単ではなく辞めてしまう方も多いのが懸念点です。
だから現在「収穫体験アドバイザー」の肩書で、3社の企業さんと契約しています。
私の経験を活かして、三浦半島を農業体験王国にするのが夢です!

ナス男(筆者)

収穫体験のライバルになる企業にもアドバイスとは!
農業体験王国を作るために、協力も惜しまないのはすごいですね!

今後の目標や就農希望者に対してのアドバイス

ナス男(筆者)

ブロ雅農園全体の、今後の目標を教えてください。

ブロ雅さん

自分の直売所を持って、収穫体験も含めて、全てブロ雅農園で売り切りたいです!
あとは子ども達に、「農業って面白いぞ!」ってことをこれからも教え続けたいですね。
私が楽しんで農業をしている姿を見て、少しでも子ども達が農業に興味を持ってもらえるように頑張ります。

ナス男(筆者)

ありがとうございます。
最後に、ブロ雅さんと同じように親元就農される方にアドバイスがあればお願いします。

ブロ雅さん

親や先祖がしてきた農業を尊敬して受け入れつつも、ただ言われるがままに作業すればいいわけではありません。
常に新しいチャレンジはしていかないと、経費も徐々に上がっている今の時代では生き残れないと思います。
チャレンジしていく過程でブラッシュアップされていくので、同じ失敗をしなければOKだと思います。

農業って、面白いぞ!
ナス男(筆者)

参考になりました。
取材させていただき、ありがとうございました!

ブロ雅農園さんのリンク

こぼれ話:娘への「英才教育」

ナス男(筆者)

娘さんに、ブロ雅流の農業を幼少期から叩きこんでいるという噂を耳にしましたが……

ブロ雅さん

たしかに私の子どもたちには、お小遣いではなく、家事や農業の手伝いに応じた給与を渡していますね。
初めは直売所用のオカワカメのシール張りで、売れた分の手数料と私の取り分を引いた額を渡していましたが……
直売所で自分がシールを貼ったオカワカメが売れているのを見て、農業はいいお小遣いになると目覚めたんですかね?
シールの位置や野菜の詰め方までこだわるようになり、今では支柱の立て方など栽培まで私を差し置いて自分でやるようになりました。(笑)

ナス男(筆者)

英才教育の賜物ですね!
将来有望な農家になりそうで、ブロ雅農園さんは安泰そうです!

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