地域おこし協力隊→茨城県城里町で新規就農!紅茶に商機を見出した理由

記事の内容

地域おこし協力隊→茨城県城里町で新規就農

中古&自作の機械で初期投資を安く抑える

紅茶専門に商機を見出した理由

茨城県城里町のしろさと紅茶ラボ代表の市丸大地(いちまる だいち)さんに、就農までの経緯や紅茶栽培のアレコレを伺いました!

目次

地域おこし協力隊→茨城県城里町で新規就農

管理人

一丸さんはどのような子どもでしたか?

一丸さん

東京都で生まれ育ったのですが、福岡にいる親戚の裏山で駆け回ったり、秘密基地を作ったりするのが大好きな子どもでしたね。
友達からも「大地は将来は田舎に住むんだろうな!」と言われるほど、田舎への憧れがずっとありました。

管理人

田舎に興味がある子どもだったのですね!
大学などはどのような勉強をされていたのですか?

一丸さん

田舎での仕事に就きたいと思い、北海道の酪農学園大学の野生動物学科に進学しました。
大学では鹿の生態や作物の保全について、修士課程まで調査や研究をしていましたね。

管理人

野生動物に関することを、修士課程まで学ばれたのですね。

一丸さん

修士課程を卒業後は、当時から付き合っていた妻が茨城県出身ということで、茨城県で仕事を探すことにしたんです。
しかし案の定、茨城県内で野生動物学科の知識を活かせる仕事は、簡単には見つかりませんでした。
ただ代わりに見つけたのが、城里町の地域おこし協力隊の案内だったんです。
「田舎暮らしの夢を叶えるチャンスだ!」
と感じて、城里町の地域おこし協力隊に応募することにしたのです。

管理人

東京から北海道、そして茨城へ移ってきたのですね!
茨城県への移住を決めた時の、周囲の声はどうでしたか?

一丸さん

東京にいる私の家族は、実家から近い関東圏への移住に大賛成でした。
獣医である妻は、
「私は私の仕事をするから、好きにしていいよ。」

と言う感じでしたね(笑)。

管理人

周りが移住と就農に賛成してくれていたのは、心強いですね!
そして見事、2022年からの地域おこし協力隊に採用されたわけですが、城里町ではどのような活動をされていたのですか?

一丸さん

地域おこし協力隊といっても、私の場合は農業政策課という、就農前提でのコースでした。
だからまずは、城里町で何を栽培するかを探ることから始めました。
当初は野菜での就農も選択肢にはあったのですが、ぐるっと町内の畑を見て回る中で、城里町の茶畑の風景のきれいさに目を奪われたんです!

一丸さん

城里町は水戸黄門にもゆかりがある、茨城県内でも有数の茶産地なんですよ。
だから茶畑も至る所にあるのですが、
「もう茶を作るのは辞める。」
という高齢農家の方が予想以上に多く、それならば私が茶栽培で就農するべきだと考えて、任期の1年を縮めて2024年に新規就農したんです

管理人

産地の風景を守るというのが、茶栽培に決めた理由なのですね。

城里町の茶畑

紅茶に商機を見出した理由

一丸さん

早々に茶で新規就農すると決めてからは、古内茶の生産組合の方々回って、実際に茶の農作業の研修をしました。
頼まれて管理する茶畑も多くて、独立一年目は40aほどと、作業場も借りることができました。

管理人

農地の確保はスムーズに……、といっても、茶栽培をメインにするには、40aでは少ないのでは?

一丸さん

たしかに緑茶に加工しようとするなら、2~3haの茶畑が必要になりますね。
ただ私の場合は、紅茶専門での栽培や加工を視野に入れていたんです。
「紅茶専門の製造であれば、新規就農でも商機がある!」と考えました。

管理人

緑茶をメインにしつつ、紅茶もやっている茶農家さんは聞きますが、
紅茶専門でやれると考えた理由があるのですか?

一丸さん

紅茶専門で就農した理由は、まずは単価の問題です。
緑茶価格は2024年まで下落傾向ですが、紅茶の価格は逆に上昇傾向にあるんです。
小規模の新規就農者でも、紅茶だけに絞ればチャンスはあると考えました。

管理人

なるほど、紅茶の価格は上がっているのですね。

一丸さん

あとは紅茶を大規模にやっている農家さんはかなり少なく、作り方やこだわりも各農家それぞれだということですね。
自身のブランド紅茶を自分で販路を作らないといけないという所は、むしろ参入の余地があって魅力的に感じました。

管理人

なるほど。
だけど茶栽培は、収穫機や製造工場など、億を超える投資が必要なイメージがあります。
一丸さんは資金面はどうやって工面されたのですか?

一丸さん

紅茶だけの製造であれば、設備投資はそれほど必要にならないんですよ。
ざっくりと紅茶の工程は、
①収穫(可搬型摘採機で摘む)
②萎凋(収穫した茶葉を広げて乾燥させる)
③揉捻(茶葉を揉む)
④発酵(茶葉を発酵させる)
⑤乾燥(茶葉を乾燥させる)
という工程を経て完成するのですが、私の場合は、③揉捻と⑤乾燥の機械を中古で購入しただけです。

管理人

えっ、それだけしか買ってないのですか!?

一丸さん

新品で買ったハンマーナイフモアを合わせても、地域おこし協力隊の卒業金と自己資金も合わせて、初期投資は200万円くらいでしたよ。
あとの農機は離農する農家からいただいたり、②萎凋や④発酵の機械は自作で賄いました。
低投資から始められる所も、紅茶の特徴ではありますね。

管理人

初期投資を200万円まで抑えられるんですか!
驚愕のコストカットですね。

自作した萎凋のための槽

栽培:農薬不使用の茶栽培

管理人

現在のしろさと紅茶ラボさんの栽培や労働力を教えてください。

一丸さん

私が管理している60aに加えて、二番茶を摘ませてもらえる茶畑もあるので、合計で100aほどです。
在来の茶を中心に栽培していて、茶園管理から紅茶の製造まで、現在は私が全て1人でしています。

管理人

紅茶栽培のこだわりはありますか?

一丸さん

まずは、農薬不使用で茶栽培をしていることです。
・茶栽培ができる北限ギリギリ
・病害虫の発生が少ない
・寒暖差が大きく朝霧が立つ
というのが特徴の地域でして、城里町の大半でも農薬不使用の茶栽培が行われているんですよ。

管理人

北限ギリギリでは、茶は病害虫が少ないのですね。
ただそれでも、病害虫はゼロにはならないのでは?

一丸さん

たしかに5月の一番茶収穫時期はまだ病害虫が少ないですが、二番茶の6月はヨコバエなどの害虫は発生しますね。
ただ紅茶の場合、害虫に食われた方が茶葉の成分が変わって、むしろ味や香りが良くなるという方もいるんです。
だから殺虫剤が使えない苦労よりも、除草剤を使わずに茶木の間の雑草を手で抜く方が大変です(笑)。

管理人

虫にやられても問題ないんですね!
農薬不使用を前面に打ち出しているわけではないとはいえ、大きな特徴だと思います。

一丸さん

あとは紅茶の製造工程では、特に萎凋にこだわっていますね。
茶葉を広げて乾燥させる際に、ゆるやかな発酵を促すように意識しています。
揺青(ようせい)という、ウーロン茶で用いられる技術を応用することで、繊細な香りを表現できるんです。

管理人

めちゃくちゃ奥が深い工程を経ているんですね。
では質問を変えて、今までの茶栽培で苦労したことはありますか?

一丸さん

2025年シーズンはかなり苦労しましたよ…。
冬が寒くて降水量が少なく、例年よりも芽吹きが遅いと思っていたら……、
気温上昇でいきなり芽が伸びて、摘み遅れてしまいました。
緑茶でもそうですが、お茶の収穫適期は3日と言われるほど短くて、摘み遅れると味に影響が出てしまうんですよ。

管理人

高温だったり、少雨だったり。異常気象には苦しめられる農家さんが多いですよね。
どのようにして、試練の時を乗り切ったのですか?

一丸さん

データだけではなく茶園の状態も見て、栽培管理や収穫時期を見極めていくくらいでしょうか。
製造工程でのリカバリーも含めて、紅茶の栽培技術を確立していくしかありませんね!

茶葉の観察をする一丸さん

販路:口コミや営業から広がった飲食店への取引

管理人

現在の紅茶の販路はどんな感じですか?

一丸さん

水戸市や城里町の道の駅や直売所、あとは飲食店にも卸しています。
紅茶は個人で製造方法が違っていて、生産組合などの出荷先はないので、全量直販です。

管理人

ブランド化して、どれだけ直販できるかが勝負になるんですね。
飲食店への取引は、どのように営業して獲得していったのですか?

一丸さん

カフェなどに行ったついでに、私の紅茶のサンプルを使ってもらうように交渉してしました。
業者間の紹介で取引先が広がっているのもありますし、直売所で買ってくれた飲食店から連絡が来ることもありますよ。
香りがいいのと、農薬不使用というのが気に入ってもらえることが多いですね。

管理人

なるほど!
まずはお客さんとして行ってサンプルを置いていくなら、精神的なハードルは低そうですね。

一丸さん

おかげさまで取引先は増えているのですが……、
紅茶の量に限りがあるのが現在の課題です。
注文分の紅茶を確実に納品できないと信頼を損ねてしまうので、取引をセーブしている所もあるくらいで

管理人

たくさんの取引を受けるのも、リスクがあることなんですね。

一丸さん

ですから紅茶の生産量を、まずは増やしていきたいです。
今後の販路目標としては、ゴルフ場などの観光のついでに買ってもらえるような場所にも、紅茶を置きたいですね。

しろさと紅茶ラボの紅茶

目標とアドバイス:法人化と「地域に溶け込むこと」

管理人

一丸さんの今後の展望を教えてください。

一丸さん

茶栽培については、改植をしながら規模拡大して、緑茶も製造するつもりです。
あとは温暖な福岡県の親戚の土地に、ベルガモットを栽培してもらっているので、
国産の和紅茶と国産のベルガモットで、「純国産のアールグレイ」を作ることが目標です。

管理人

緑茶や純国産のベルガモット。
しろさと紅茶ラボは、ますます面白くなりそうですね!

一丸さん

目標を実現していくために、法人化を見据えた雇用もしていくつもりです。
茶の他にも、米が1.5ha、サツマイモも50aほど栽培していますが…、
5月は田植えとサツマイモの定植と紅茶の時期が重なって、毎日20時間くらい働かないと回らない状態なんですよ。
城里町の方々にはいつもお世話になっているので、農業を通して地域に恩返ししていきたいですしね。

管理人

素敵ですね!
最後に一丸さんのように、移住や新規就農を考えている方にアドバイスがあればお願いします。

一丸さん

移住や新規就農のアドバイスは、いつも決まって、
「地域に溶け込め!」と回答しています。
私は地域の行事には積極的に参加しますし、コミュニケーションを面倒だと思っていません。
冷めた都会の人間関係より、密な田舎の人間関係を覚悟して移住してきましたから。
地域の方々と打ち解けられていくことで、農地や機械を借りられたりします。
私なんて、農機や農地、作業場や家まで、全部もらいものですから!

管理人

とにかく、地域に溶け込む努力をすることが大事なんですね。
取材させていただき、ありがとうございました!

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