決まっていた内定を全て断り、農家での研修や農業大学で学ぶこともせず、大学卒業後に即新規就農!
今回インタビューした農家は、茨城県かすみがうら市のまっつん農園の松本浩司(34歳)さんです。
聞くからに破天荒な農家のまっつんさんに、就農までの経緯や今取り組んでいること、今後の目標を取材しました!
農業に興味のある方は、ぜひご覧ください!
四大卒業後にいきなり新規就農という決断
就農するまでは何をしていましたか?
四年制大学で経営学部の学生をしていました。
漠然といつか起業したいという思いはありながらも、就活もして内定も何社かいただきましたね。
タイトルの通りですが……
いきなり大学卒業後に新規就農ってほぼ聞かないですよね。
なぜ農業に興味を持ったのですか?
海外ボランティアやバックパッカーで海外の新興国に行った時の経験が大きかったです。
カンボジアでは食文化の違いを肌で感じ、ベトナムに行った時にたまたま入ったレストランの野菜が口に合わなかったことで、日本の野菜の美味しさに改めて気づきました。
日本だけにいては経験できなかったことでしたから、私の食に対する価値観が大きく変わりましたね。
就活も始めてはいましたが、やっぱり胸の奥に引っかかっている食に対する想いは止められなかった!
「食を作る、農業という仕事が、起業したら面白いんじゃないか!?」
ってことで、農業で起業するつもりで農家になったという流れですね。
そんな経緯だったのですね。
ただ、即新規就農ではなく、農家での研修や農業大学校に通うという選択肢もあったはずです。
なぜ即新規就農だったのですか?
たしかに、農業大学校に2年通って知識を勉強するのは、新規就農では一般的だと思います。
ただ、座学で農業を勉強するのと、実際の農業とでは全然違うじゃないですか。
私は2年の農業大学校の勉強期間も、実際自分で農業をやるという経験に充てたかったんです。
最低限の農業の知識は、地元の農家や普及センターのセミナーなどで得られると踏んでいました。
農家での研修も考えなかったですね。
苦労するのは承知の上、後に俺が農業で成功したら、いきなり就農したことは武勇伝の一つになるな!くらいに考えていました。
農地は友達のおばあさんから3反借りられて、小さな管理機も借りられたので、もうこのままスタートしちゃえ!って感じで、勢いで始めました。
大学卒業後にいきなり新規就農すると聞いて、周りの方たちの反応はどうでしたか?
家族からも友達からも、特に否定的なことは言われませんでしたね。
松本浩司は変わり者で、起業したがっていたことは知られていたので!
なるほど。
あと気になるのが、やはりお金の面です。
就農当初の資金はどうやって工面しましたか?
社会人として働かずにいきなり就農したので、就農当初はマジで金がなかったです。
昼は自分の農業をしながら、夜はコンビニの夜勤、栽培に余裕がある時期は土木系や地元の農家でアルバイトしたりして、当面の出費分を充てていました。
今思い返しても、若くて体力あるから何とかできた生活ですね(笑)
新規就農者であれば、就農準備資金の補助金が受けられたのでは?
就農準備資金・経営開始資金:農林水産省 (maff.go.jp)
ナス男さんの言う通り、年150万円の補助金を受ける資格はあったのですが、農業を続けていく覚悟がまだなかったので就農して3年間はもらわなかったです。
なんとか自分の農業が形になってきて覚悟が決まった4年目から、2年間、補助金を受けました。
お金に余裕のない生活だったので、だいぶ助かりましたね。
実際に新規就農してから、農業のイメージは変わりましたか?
ぶっちゃけ、農業で稼ぐことはもっと簡単だと思ってました。(笑)
「若くして成功している起業家たちと同じように、俺も10年やって豪邸を建ててやるぜ!」くらいの根拠のない自信で。
いざやってみたら、全く何も分からないしうまくいかない!
もう何度辞めようと思ったことか…(笑)
多品目の野菜セットを止めて作物を絞った決断
栽培面積と作物、労働力を教えてください。
就農当初は30aでしたが、今は1.5haまで農地が増えました。
作物は、夏から秋にかけてナスとインゲン、冬から春にブロッコリーとネギがメインです。
労働力は、期間雇用をする時もありますけど、ほぼ私一人ですね!
就農当初は、野菜セットを販売していたと伺いましたが、今は作物を絞って販売されていますね。
作物を絞った経緯を教えてください。
新規就農時に野菜セットから始めたのは、完全に「キレイゴト抜きの農業論」の著者の久松達央さんの影響です!
「同じ茨城県に、本を出されているすごい農家がいる!新規就農なら、有機栽培で野菜セット一択でしょ!」
と言う感じで、野菜セットを軸に販売していくことに迷いはありませんでした。
でも研修も農業大学校にも行ってないから、どうやって野菜セットを組むほどの野菜を栽培できるのかさえ分からなかった。
だからとりあえず、ホームセンターに売っている種を一つずつ買ってきて蒔くところから始めました!
え、いやいや(笑)
ホームセンターの種をたくさん買ってきて同時に蒔いても、収穫時期がバラバラなので、毎週野菜セットを組む分の野菜は出来ないのでは?
お恥ずかしい話、種を蒔いてから失敗に気づきました(笑)
野菜セットは収穫時期から逆算して、栽培のスケジュールやタスク管理できることが大前提。
相当に頭が良くないとできないと察したので、早々に野菜セットは諦めましたね(笑)
そこからJAの部会があったり、小面積である程度の売上が計算出来たり、前作との相性も考慮に入れながら、今の作型に落ち着きつつあります。
今の作型に落ち着くまでに、紆余曲折あったのですね。
栽培に関しては、新規就農当初から今でも失敗だらけですね!
だけどその分、現場の経験値は他の農家よりあると自負しています!
あえて失敗するであろう選択肢を取ったこともありますし、栽培に失敗しなかったら分からなかったこともいっぱいあります。
まあ、これはこれで武勇伝としていつか語れる日のために取っておきます!
ちなみに、販路はどんな感じですか?
スーパーの卸業者が6割、JAが2割、産直ECが2割くらいですかね。
産直ECの割合が大きいのはすごいですね!
コロナ禍を機に、個人のお客様からの取り寄せ需要が増えた実感はありますね。
リピートしてくださるお客様や興味を持ってくれる業者の方いるのは、ありがたいことです。
価格も自分で決められますし、直販は今後も割合を増やしていきたいですね。
農業系サイト立ち上げの決断
まっつんさんは、農業だけではなく、農業系のビジネスがしたいとおっしゃっていました。
具体的なビジネスの構想はあるのですか?
まずは昨年、「農家のコミュニティ」というサイトを立ち上げました。
私の農園に、「具体的にはまだ分からないけど、農業のこと知りたい!」という方がが話を聞きに来られたことがきっかけです。
「農業に何かしらで関わりたいけど、考えが漠然としすぎてて誰に相談していいかも分からない。」という方は多いと思うんです。
だから、農業に関わりたい方と農家をつなげる場をネット上に設けました。
たしかに、農業に何かしら関わりたいけど考えがまとまらなくて相談できないという方、多そうですね。
「農家のコミュニティ」には就農希望者の方から多くの反響があって、全国の農家の方にも、受け入れ相談先として登録していただきました。
農業ってまだまだ情報や人とのつながりが手に入りにくいなと思う反面、農家の経験を活かして人や商品をつなげることにもまだまだ需要があると考えました。
そこで今試作していることが、農業系ベンチャー企業と農家をつなげるマッチングサービスですね。
中小農家向けの商品を展開している農業系ベンチャー企業が、自分たちの商品を必要としてくれる農家を探す伝手がなくて困っているという意見を度々耳にしていたんです。
それなら、現場の肌感覚が分かって伝手もある私が受け渡し役になれるだろうと!
へえ!それは面白そうですね!
でも、農業の他にビジネスを手掛けるとなると、周りからの妬み僻みもあるのではないですか?
いわゆる「農業×○○」「半農半X」という取り組みですが、応援してくれてる方もいれば、批判的な意見は少なからずSNSでは目にします。
「他のことをやってる暇があるなら、農業だけしとけ!」ってね。
おっしゃることはその通りかもしれませんが、さすがに私でも凹みますよ(笑)
ただ元々起業という感覚で農業を始めた私にとっては、今回の農業系サイトは、日々やっている農業の延長線上にあります。
農業で数多くの失敗をしてきた私だからこそ、需要がある農業機械や農家の層に気づけるはずです。
面白くて農業のためになる、と思ったことをやろうとしているだけです。
幸いにも私は失敗には慣れっこなので、農業と同時に農業ビジネスも成功するまでやり続けるつもりです。
まっつんさんらしい回答ですね。
今後の目標や就農希望者に対してのメッセージ
就農希望者にメッセージをお願いします。
「もっと気軽に農業を始めてみようよ!」ですかね。
農業はたしかに難しいですし、始める前に知識や準備が必要なのはその通りなんですが……
難関の国家試験があるわけでもないのに、あまりにも就農に対してビビって踏み出せずにいる方も見受けられるからです。
多少の失敗なんか気にしたってしょうがないですよ。
致命傷さえ避けられれば、のちに武勇伝として語ればいいんですから。
まあ、私のように研修も農業大学校も行かない新規就農を勧めるわけではないんですけどね
ありがとうございます。
最後に、今後の目標を教えてください。
まずは、農業の売上と利益率を上げたいですね。
売上1000万を超えて、利益率も7割になるべく近づけたいです!
あとは農業ビジネスを通して、農業=3Kというイメージは壊したいですし、「なりたい職業ランキングナンバーワンに農業を押し上げたいです。
異色の農家だろうと、農業で生計は立てられるということは、これからも実践していきたいですね。
取材させていただき、ありがとうございました。
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